★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.184

4月です。
樹齢2000年と言われる山高神代桜エドヒガン)は今年も見事な花を咲かせました。(写真添付)
例年よりも10日ほども早い満開でした。
この末裔と言われる我が家の桜もいち早く満開になりました。(写真添付)
北杜市域は標高に差があり、例年、4月いっぱい桜を楽しむことが出来ますが、さて今年はどうなることやら。

●先月ご案内しましたが、16日から銀座のギャラリーでグループ展が始まります。
 ご都合のつかれる方、ご覧いただければと思います。
 ★第7回 WORK TEN(行動出品者10人展)
  ・日時:2018年4月16日(月)〜4月21日(土)
     12:00〜19:00(最終日は16:00まで)
  ・場所:ギャラリー風
     中央区銀座8-10-4 和孝銀座8丁目ビル2階
     tel.03-6264-5171

  *私は以下の時間に会場に居ます。
   ・4/16(月)   13:00〜19:00
   ・4/20(金)  15:00〜19:00
   ・4/21(土)  13:00〜16:00


では《Ryuの目・Ⅱ−no.184》をお楽しみ下さい。


◆今月の風 : 話題の提供は佐貫惠吉さんです。

ダルトン・トランボと「ブラックリスト」−
一昨年2016年の夏、久しぶりに出かけた川崎のシネマコンプレックス(=シネコン)で『トランボ=ハリウッドに最も嫌われた男』の封切りを観た。1977年刊行のブルース・クック著「ダルトン・トランボ」(2016年日本での映画公開とほぼ同じ時期に和訳が出版されている)を映画化したものだ。

 ともかくこれほど痛快な映画はない。異常なまでの迫害にさらされ、それと戦い、しかも最後に打ち勝つ、感動的な物語だ。 当時の合衆国では、先住民やアフリカ系、アジア系、ユダヤ系さらに「遅れてきた」南欧・東欧系の人たちへの差別が渦巻いていた。彼は、世界大戦の惨禍に身近に接し、大恐慌渦中の銀行家の専横と労働者の困窮を見ていながら、それを見ないふりをすることはできなかった。そしてナチズムが台頭し、スペインでの暴虐が始まったとき、ハリウッドで、脚本家、監督、俳優、そしてプロデューサーの一部までも、ほとんど一世代丸ごとと言っていいほどの多数が左に傾いていったのは不思議ではなかった。

 こうしてトランボも共産党員になる道を選んだ。しかし彼は独特の共産主義者だった。靴屋の店員の子として生まれ、パン工場で働きながら大学へ行き、小説家を目指した青年時代、競争心が強く物質主義的で、仕事の成果と自分への評価がドルで表現される社会で率直に金を追い求め、少なくとも若い頃は苦手なことは避けてきた。努力が(ドルで)報われる社会、まさにアメリカ的な、アメリカに典型的な共産主義者だったのだ。ハリウッドに邸宅を構え、「不遜にも政府に抗う人たち」が「スイミングプール・コミュニスト」と揶揄された。他人を虐げない限り自分の稼ぎで贅沢をして何が悪い。信念や道理を大事にし、いつでも贅沢な生活を手放す用意があり、事実そうしたのが彼らだった。

 当時言われた「アメリカ的」とは、戦時経済による国内経済の過熱化、それがもたらす社会対立の尖鋭化が進む中での「持てる側」の行動規範である。この「純粋アメリカニズム」の論理は、第一次世界大戦前後から大戦間時代、戦中、さらに戦後の冷戦時代を通して、アングロサクソン中産階級を中心に、移民系住民の個別の民族的ナショナリズム、民族集団に対して誰であれ合衆国への忠誠を求め、排他的であれと主張するものであった。 1947年下院非米活動委員会がハリウッドに目を向け、全ての映画人を「友好的」と「非友好的」に分けた。後者の「非友好的証人」に対し召喚状が発せられ聴聞会に喚問した。喚問されたうち10人が証言を拒否し、議会侮辱罪に問われ1949年に最高裁で上訴が棄却され、1950年6月刑務所に収監された。(「ハリウッド・テン」)

 「あなたは共産党員か?過去にそうであったことがあるか?」という質問に対して、合衆国憲法修正第一条(信教・宗教・出版・集会の自由)を根拠に回答を拒否したのである。現に共産党員の人も、過去あった人も、そうでなかった人もいた。しかし、それに答える必要があるのだろうか?(トランボは1948年に離党している)

 アメリカには建国以来二つの伝統がある。民主主義と反動主義である。「民主主義の国アメリカ」と言うがこれは贔屓目な呼称で、半分しか真実ではない。民主主義の伝統に属する人たちはいつも守勢に立たされていたのだ。自由がいつも脅かされていた国だ。奴隷廃止論者も自分の正体を隠さなければならなかった。秘密にする必要があったかどうか、議論の余地はあるが、秘密主義を嫌う人たちは沈黙を罪の自白だと解釈した。自明のことだが、一つの質問に答えてしまうと、政府は自分たちにはどんな質問もできる権利があると思ってしまう。共産党員ではなかった?、よろしい、ここで一つのハードルを越えた、と安堵しても次がある。こうして仕方なく自分の知っている共産党員の名前を口走ることになる。しかし、政府が誰に対してもこのような権利を持つことは認められない、民主主義というもうひとつのアメリカの伝統に忠実でなければならない、と思う人も決して少数ではなかったのだ。「赤狩りの時代」はアメリカ社会を深刻な分裂に陥れた。

 トランボが刑期を終えて出てきてそれからが正念場であった。聴聞会開始とともに始まった「ブラックリスト」の時代は終わるどころか、ますます苛烈を極めていた。50年代の「冷たい戦争」という時代背景がある。脚本家トランボは秀作が書ける人だった。しかも脅威的なスピードで仕上ることができた。ともかく多作だったのだ。密かに偽名や代理でやり過ごし作品を流通させ、ブラックリストに挙げられた他の脚本家たちにも仕事を回し生活を援助した。この映画脚本の「闇市場」がなくてはハリウッドが機能しなくなるまでにしたのだった。こうして、計画的にしぶとく戦い「ブラックリスト」の無力化をもぎ取ったのだった。耐えることも美徳かもしれないが、待っているだけで向こうから勝利がやっては来ない。這い上がっていって一つ一つ潰していく、このしぶとさがまた素晴らしい。

 1953年制作(同年アカデミー賞受賞、1954年日本公開)の『ローマの休日』は親友脚本家を代理に立てた。(1992年になってアカデミー協会は受賞者をトランボに変更し、翌年妻クレオにオスカーが授与された。調査の上全米脚本家組合WGAが正式にクレジットを修正したのは2011年になってからだ。) 一時「疎開」していたメキシコで見聞した少年と牛を題材にした、偽名「ロバート・リッチ」の脚本作品『黒い牡牛』(1956年制作、同年日本公開)は1957年にアカデミー賞を受賞した(トランボにオスカーが贈られたのは1975年になってからだ)。ブラックリストを破って最初にトランボをクレジットしたのは、『栄光への脱出』(1960制作、1961年日本公開)のオットー・プレミンジャー監督だった。追いかけるように続いたのが『スパルタカス』(1960制作、同年アカデミー賞受賞、同年日本公開)の主演・製作総指揮のカーク・ダグラスである。

 映画『トランボ』では、主人公とその妻を演じた、ブライアン・クレストンとダイアン・レインの好演は言うまでもないが、嫌みな反共評論家ヘッダ・ホッパーに映画『クイーン』(2006年)の名演技でヴェネツイア映画祭で女優賞を獲得したヘレン・ミレンが扮して適役だ。オットー・プレミンジャー監督、カーク・ダグラス、この人たちの「そっくりさん」は微笑ましいが、 ヘッダ・ホッパーとコンビで「アメリカの理想を守るための映画同盟」でトランボたちに対抗したその同盟議長を4年間も勤めたという背の高い大根役者、「デューク」ことジョン・ウエインのそっくりさんには笑っ てしまう。

 『黒い牡牛』のプロデューサーでトランボの闇市場時代を支えたキング兄弟の次男フランクは1959年にインタビューに答えて言った。 「(トランボに共産党員かどうか尋ねたことがありますか?)もちろん尋ねませんでした。彼の政治信条にも宗教にも肌の色にも興味はありませんから。関心があったのは彼の作品です。あれはいい作品ですよ。カトリックの幼い少年とペットの話です。そこに何か共産主義的なものがありますか? 世界中のあらゆる国々のレビューをお見せしましょうか? それとまったく逆のことが書かれていますよ。このビジネスに必要なのはよりよい脚本家であって、政治家ではないのです。」 

このフランク・キング役にコーエン兄弟の作品の常連で『バートン・フィンク』の不気味な保険セールスマン役を演じた巨漢ジョン・グッドマンが扮している。トランボをクビにしろと脅しに来た大手映画制作会社の重役をバットを振り回して撃退したのには迫力があった。

 極めつけは、映画同盟や在郷軍人会の切符の不買運動とデモの中、『スパルタカス』を鑑賞し、出てきて「感想? 良い映画だね。きっと大ヒットするよ!」とコメントしてブラックリストの終焉を政治的に宣言したジョン・F・ケネディの実物だった。下院非米活動委員会の一員でもあった反共の闘士ニクソンの時代は終わったのだ。(つづく)


◆今月の隆眼−古磯隆生
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− 移住生活・その32/名残の雪 −

3月21日、お彼岸の中日、夜明け前あたりから雪が降り出しました。予報では大雪になる可能性もあるとか。桜の開花宣言が出始めた時期です。
“名残の雪”です。
ほのかに白み始めたころ目が覚め、雪はどんな具合かなと気になり2階の窓から外に目をやると、15メートルほど先にある桜の木の脇に鹿のカップルが佇んでいるではないですか。これは珍しい。餌を求めてでしょうが、二匹でしばらくじーっとしています(写真貼付)。白州に移住してきてから何度か鹿は見ましたが、大体が車の音に驚いて逃げまどうことばかりでした。今回のように人の気配を察することなく、じっとくつろいでいる風に見える鹿を見るのは初めてです。何とも言えない静寂とゆったり感と親しみを覚えるしばしの癒される素敵な時でした。
季節はずれの雪で我が家の猫も縮こまっています。朝の内にストーブ用の薪を部屋の中に運び込み、一日中火を絶やさないように準備。この冬用の残りの薪もあとわずかになってきました。ぎりぎりもつかな・・・。
雪はそのまま一日中降り続けました。お昼頃で10cmくらい積もったでしょうか。水分を多く含んだ重い雪です。この時期の雪は重く、溶けやすい。
夕方5時位に雪の降り続ける中、我が家から5分ほどで行ける温泉に行きました。“白い世界”を楽しもうと、少々寒かったのですが雪の舞う露天風呂に入りました。辺りは雪、雪。祭日ですが、雪のせいでお客はまばら。ゆったりできます。久し振りにのんびりした気分になり、これぞ“名残の雪”なんだなーと浸っているうちに“イルカ”が歌ってる「なごり雪」のメロディーがふと頭をよぎります。
  汽車を待つ君の横で僕は
  時計を気にしてる
  季節はずれの雪が降ってる
・・・・
歌詞ははっきりとは思い出せないのですが、何となく口ずさみたくなるいい雰囲気。“独りの世界”に入っていました。額や頬にあたる雪が何とも心地よく刺激してくれます。口の中に入らないかなと顔を上に向けて口を開けるもののなかなかうまくはいかない・・・いい時間だ。
しばらくして、目下制作中の100号の絵に意識が向かいました。今日の昼間の描く作業はあまり上手く行かなかったので途中で止めていました。さて、明日はどの様に進めていけばいいかな、そうだ、春を意識した色の構成だからもう少し白味を多くしてみよう・・・。気持ちのゆったりした、良い時間です。
季節はずれの“名残の雪”は思わぬ“ゆったりした時”を与えてくれました。


◆今月の山中事情144回−榎本久・宇ぜん亭主

−落ちる−

これ迄米軍機、自衛隊機は一体何機墜落したものだろう。そしてその都度トップは「二度と繰り返してはならない」と言う。
真相の究明をする間もなく又次の事故が起き、又「二度とこのような事故は起こさせないよう徹底する」を繰り返す。真相が解ったとしても、機体の老朽化や操縦ミスを理由にして、根本的な原因は知らされない。特に、米軍側のそれは日本当局は破片一つも検証することが出来ないのが現状だ。そしていつも犠牲になるのが日本国民である。守ってあげているのだからモノは言うなというのが日米トップの考え方だとしたらやりきれない。
敗戦国の悲しさだろうが、その同調ぶりがどうしても理解出来ない。守るすべのない市民が、ある日鉄の塊が落ちて来たら逃げ惑う以外どうしろと言うのか。
少なくともその不安を与えないことが日米当局が対処しなければならないことなのだと思うが、私の目には何ひとつ国民側に配慮した方針を見ることが出来ない。それよりもあと何機墜落したら本腰を入れてこの重大さに気づくのかと聞きたい。
佐賀県神崎市で起きた自衛隊のヘリコプター事故。通称「アパッチ」と言われる攻撃用のヘリで、主に戦車を狙うヘリと言われる。一機八十億円。十三機配備されている。そのヘリが住宅地上を普通に飛んでいることが露呈した。それが今回の事故を起こした。民家の周辺には畑があるにもかかわらず、民家に墜落した。真相が解明したとしても被害者の精神的苦痛は消えない。首相は同型機の飛行停止を命じたが対処療法だ(今頃は又飛んでいるかも知れない)。
その舌の根が乾かぬ間に又三沢基地所属の米軍機F16が基地近くの小川原湖に燃料タンクを投棄した。こともあろうにそこではしじみ漁の最中であった。
日本を守る道具が日本人を襲う「モンスター」になっている。基地の公益性を理由に最高裁は住民の声を認めないのが今の司法だ。
なさけない

宇ぜんホームページ
  http://www012.upp.so-net.ne.jp/mtd/uzen/


◆Ryu ギャラリー
 今月の一枚は「戯」です。
  サイズはA4(21cm×29.7cm)です。
  (パステル+アクリル絵の具)
  お楽しみ下さい(写真貼付)。


★「はてなダイアリー」というブログでRyuの目の掲載をしています。  
  これまで発信したものは全て掲載しています。
  私のホームページにリンクしておりますのでご覧下さい。
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