★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.52

フレッシュマンの鼓動が感じられる四月になりました。予報では早かった桜の開花も例年とさほど変わりなく、今は葉桜が心地よい色合いを見せています。

先日、友人からこんな便りが届きました。

「先日、久々の風邪引きから解放された暖かい桃の節句に大人の火遊びを楽しんできました。山火事ではありません。春を迎える秋吉台の風物詩(野焼き)風景ですが、乾燥注意報発令中の夜のダイナミックでなんとも危険な火遊びでした。闇のカルスト台地に見た幻想的な世界も、陽の出と共に真っ黒な丘に変身していますので春の若草色に染まる迄のトレッキングシューズは長靴がお勧めです。山はこうして春を迎えます。」

と言うわけで、送ってもらった野焼きの写真を貼付しました。堪能下さい。


では《Ryuの目・Ⅱ−no.52》をお楽しみ下さい。


◆今月の風 : 話題の提供は岸本雄二さんです。

−音楽とともに−

昨年10月に96歳の母が亡くなった際、音楽好きだった母を偲んで音楽葬を兄の企画で行いました。三鷹のお寺であげた無宗教の葬儀でしたが、娘のピアノと私のギターと母がよく口ずさんでいたオペラのアリアなどで楽しい集まりになりました。 
時は30年ほど戻って、終戦後でまだピアノの無かった我が家では、父の発案で家族による合唱の集いを私のギター伴奏で行うようになりました。父の亡くなった1964年に私はギターを片手にアメリカへ留学しました。
時は移って、1991年にアメリカはサウス・カロライナ州クレムソンに音響効果がよくて家庭音楽会がしたくなるような自宅を設計しました。それ以来、毎年クリスマスの頃に近所の音楽愛好家とその家族を集めて20人ぐらいの音楽の集いをするようになりました。皆で持ち寄った料理で夕食をすませた後、大人や子供による10人ぐらいの演奏者がピアノやバイオリンやチェロなど得意の楽器で2,3曲ずつ弾いて楽しいひと時をすごします。毎年少しずつ音楽の質が上がり演奏楽器の種類も増えて演奏者の巾も広がり、初心者から上はジュリアード音楽院の先生などのプロによる心に響く名演奏も聞かれるようになりました。弦楽三重奏、レコーダー・三重奏、ピアノとサキソホーンによる二重奏、など、家庭音楽会の雰囲気の中で独奏だけではなしに、室内楽も聞けるので何とも豊かな気持ちになります。
今年で15年目を迎えまして一つの節目となりましたので、これからは、國際色をより一層豊かにしたいとも考えています。音楽は国境や文化を越えて、自由に直接心に働きかけるので、言葉の障壁や習慣の違いによる誤解も生じません。
一生懸命音楽を奏でることによって、音に込められた気持ちを分かち合えるからでしょう。もし日本からの参加を希望される方がありましたら是非ご一報ください。クラシック音楽だけではなしに、ジャズや日本の音楽も歓迎です。
  
・話題を提供して下さった岸本雄二さんはアメリカのクレムソン大学(サウスカロライナ州)教授で、これまでに何度も話題提供頂きました。



◆今月の隆眼−古磯隆生

−六本木の二つの再開発−

六本木に跡地再開発の巨大施設が相次いで出来上がりました。ひとつは東京大学生産技術研究所(あの2.26事件の旧陸軍歩兵第三連隊兵舎)跡地利用の<国立新美術館>。もうひとつは防衛庁跡地利用の<東京ミッドタウン>です。共に鳴り物入りの巨大プロジェクトです。たまたまそれぞれを見る機会がありましたので今回と次回に分けて感想を述べてみたいと思います。

その1−うわさの国立新美術館

そのオープンがテレビ・雑誌等で盛んに取り上げられた国立新美術館。公募団体の展示が主目的(そのことの意義については異論もあるようですが、それはそれとして…)の巨大な美術館と言うよりも美術展示施設です。地下鉄からのアクセスもよく、外部の空間(庭)もゆったりしている都心のいい場所にあります。
建物を見て回った全体的な印象は<巨額の費用をかけた施設ではあるが、大味で、感動するような空間が残念ながら出来ていない>でした。設計者は都知事選出馬の黒川紀章
何と言ってもジャーナリスティックに人目をひいているのが“取って付けた感の<前面を覆ううねったカーテンウォールの外皮(外観)>”です。このカーテンウォールのうねりにフラクタル曲線を採用しているとの説明である。しかし、その重もったるい外皮に包まれたエントランスロビーのアトリウムには、人々を威圧するかのような逆三角錐のコンクリートの固まりが挿入され、とてもリラックス出来るヒューマンな空間とは言えません。
“展示空間は機能的に直線的に、ロビーのアトリウムは外と内の境の曖昧領域の空間で波打つ外皮…”と説明されるコンセプト、この対比概念が最早陳腐ではないだろうかと思われもします。‘外と内の境の曖昧領域'は四周に存在するのであるからむしろこの曲面の外皮で全体をすっぽり包む方が余程コンセプトをクリアーにしたのではなかろうか。
また、旧建物のほんの一部分の外壁を残す(残念ながら美術館側からは見えない!)ことにより「歴史と現代の“共生”」と主張されるが、いささか姑息で面はゆい…“共生”を言うならもっと本質的な問題としてコンセプトを立てるべきではないのかと思われ、この建築家の独善性を垣間見る思いがしました。
それにしてもお金をかけている!

注:
 カーテンウォール:建築物の構造耐力に関係ない壁体で、建築物の荷重を支える構造は柱と梁によるものとし、外壁はそれらの構造物に貼り付ける工法で設けられる

 フラクタル:自然界に、例えば海岸線とか雪の結晶の様に、一部の図形がそれを含む全体の図形と相似している(自己相似性)デザインを見いだすことが出来ますが、このような原理を数学的に体系化したのがフラクタルです。

国立新美術館: http://www.nact.jp/



◆今月の山中事情−榎本久(飯能・宇ぜん亭主)

この辺りでは「天然のアルカリ還元水」がそこら中から湧き出ています。そのつもりなら「無料」でタンクに何本でも取水出来るのです。我が家では井戸水もありますゆえ、わざわざそれはしていませんが、普段から健康管理を怠らない善男善女はずい分遠いところから水を汲みに参ります。行く時、帰る時に私の店に寄って下さる方々がおりまして、水の効能を話して下さいますが、皆様それぞれの言い方がありますので、私はただ頷いているだけですが…。彼等の言によれば、取水する場所によってそれぞれの見解があるようです。
ところで昨今、どこかの農林水産大臣がこともあろうに年間五〇〇万円ものお金をかけて「何とか還元水」を造っているような、買っているような報道が喧しくなされています。私に言わせればそんな大金をかけて「何とか還元水」を造らずともここに来れば「天然の還元水」がそれも無料で自由に取水出来るゆえ、どうぞ暇な秘書さんに汲みに来させればあんな言い訳を言う必要もないのになあと思いますが、いかがですか?大臣!又もし、「何とか還元水」を不老不死の水のように思って飲んでおられるようでしたらそれは誤解です。そうであったらこの辺りの人も、水を汲みに来る方も誰も死なないことになります。
しかしこの話、簡単に「水に流す」ワケには参らないなあ。


★Ryu の 目のホームページ
URL http://www.jade.dti.ne.jp/~vivant