★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.35

◆今月の風 : 話題は前回に続き、村上逸郎さんのチベット11日間の旅です。

第2回
天空都市:

ラサ空港に着くとまず周りにあまり見たことのない明らかに高山の風貌をした山々がそびえているのが眼に入る。ふと何か違うなという感じを覚え、すぐにそれが空気が薄いため異様に遠くまでくっきり見えるせいだということに気付き感激する。まさに天空の都市である。迎えの小型バスに乗りチベットの母なる川ヤルツァンポに沿って走り出す。100km近い猛スピード。クラクションをやたらと激しく鳴らす。山々は低木の緑のもの、土色のもの、砂のもの、岩山のもの、それに赤茶けた堆積岩のものと場所により様々な様相を見せる。土色の大河は溢れる水量で滔々と流れとにかく広い。それに誰も登ったことのないであろう新鮮な峰々がいつまでも続く。チベット高原は昔は海底で、それが隆起してできたのだという。道中ガイドさんよりチベットでは鳥葬(死んだ人を細かく解体し、骨も細かく潰して裸麦のツァンパと混ぜて団子状にし、呼び寄せた禿鷹などに食べさせる。一晩で跡形なく消えるという。)とともに水葬(同様に細かく解体しヤルツァンポ川に流し魚に食べさせる)も行われるため、仏教の輪廻を信じるチベット族の人は川の魚は食べないが、人民解放軍がやってきて乱獲したため今では川に魚はあまりいないなどの話を聞く。広大で荒涼とし誰もいない処だと思っていると、忽然として数軒のチベット族の日干し煉瓦作りの家が現れ、牛、ヤク、羊、馬等と暮らしている。その繰り返しの連続。途中、突然発車しようとしたバスのシャフトが故障し立ち往生した。救援の代替車がラサから到着するまで3時間待ちということもあったが周囲の風景の素晴らしさにツアーの皆さんはそれも良しとして過ごす。その間若い女性ガイドさんがヒッチハイクで近くの町まで水の確保に走る。そしてツェタンの町。本当に貧しそうなチベット族の日干しレンガの家とまだ発展途上と思える漢民族の新しい家々がそれぞれ並ぶ。建築中の家も多い。チベットではタルチョと呼ばれる経文を書いた色とりどりの布旗を家の四隅に立てるが、それに混じってやたらと中国共産党五星紅旗が目立つ。街中はすべて中国語(とチベット語の併記)。赤いスローガンの文字。ここは一体どこだとちょっと違和感がある。


峠越え、そして川渡り:

町から町への移動は車で数時間から7,8時間かかる。たいていは峠越えを伴う。舗装道路も整備されつつあるがまだ昔ながらの山肌を削っただけの狭い砂土ぼこりの道を通らざるえないところもある。ラサからギャンツェに向かう途中のカローラ峠(5200m)越えもそうであった。スリル満点、命懸けである。時折対向車も来る中、片や断崖絶壁、ガードレールも何も無し、所々、岩肌に徐行の意味と思われる「慢」の字がペンキで書かれている。標高5000mの山肌を通るのでくねくねと曲がるがカーブミラーもない。カーブにさしかかるとクラクションをけたたましく鳴らすだけ。狭い断崖道での対向車とのすれ違う時は恐怖感で一杯になる。仕方なく南無阿弥陀仏と呟いたりする。日本では絶対に通行禁止であろう。見所の6000m級の峰がすぐ目の前に紺碧の空の下何万年の氷河を抱いて聳える景色、そしてそこでも生活するチベット族の人々、それはそれは誠に興味深いが、正直に言えば高所恐怖症の身としては一日生きた心地がしなかった。小型バスの現地ドライバーのテクニックに驚愕の念を覚えざるを得ず、降りる時は思わず謝謝といって堅く握手した。シガツェの夏魯寺(シャーロー)は市内から26kmの田舎にある。驚いたことに途中から道がなくなる。大きな石ころや穴ぼこだらけの野原とも川原ともいえないところを小型バスは1時間近く車体を大きく左右に揺らしながら進む。途中流れる川も強引にそのまま渡る。時々勢いをつけて渡りきる。車が深みにはまったらどうなるんだろう。これじゃあ車のシャフトも痛むわけだ。因みにわれわれの小型バスは米国と中国の合弁会社「金龍」製とのこと。(政府関係者の車はトヨタランクルがほとんどだった。)


◆今月の隆眼−古磯隆生

−まちの中のちょっとした異変−

紅葉の季節になってきました。例年より幾分遅いようですが各地の紅葉は日に日に表情を見せてきているようです。先日(1週間程前)我がまちの紅葉の具合はどんなもんかと井の頭公園内のわ我がお勧めスポットを見に行きました。私のお薦めスポットは井の頭線井の頭公園駅近くのケヤキ林です。この場所は数年前見事な紅葉の世界を繰り広げてくれた(鮮やかな紅の欅絨毯を見せてくれた)場所で、前夜の雨に色気づいた枯葉が朝日を浴びて浮かび上がった紅のその得も言われぬ光景は今も目に焼き付いています。
毎年この時期には必ず行くスポットです。変わりゆく様を満喫できる訳ですが今年は何だか変です。そのスポットに近づくのですが何だか変です。眺めが汚い!まだ紅葉には早いとは思いつつも葉の色具合の変化が尋常ではない。不思議に思ってケヤキに近づきました。何と、葉が枯れてしまっているではありませんか。しかもそこら中のケヤキの葉が!!まだ紅葉しない緑の葉と枯れた葉が入り交じって中間(紅葉状態)がありません。同じ枝にもかかわらず。しかも枯れ方が半端ではない。枯れ行く様にグラデュエーションが見られないのです。そのスポットだけが他のスポットと局所的な気候条件が異なっていた所為かと
気になって他の地域のケヤキを見ましたが、やはり枯れたケヤキを見ました。今年は夏の長い暑さの所為でしょうかケヤキにダメージが見られるようです。
徐々に変色(紅葉)するグラデュエーションがあってこそ紅葉の面白さが演出されるであって、緑の葉と枯れた葉の単なる組み合わせは美しくありません。この後どんな紅葉を見せてくれるのか不安がよぎります。