★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.32

◆今月の風 : 話題の提供は榎本久さんです。

−詩集「お母さんのばか」の雑感−

人が生きてゆくにあたり、過去も現在も悲しいことがあまりにも多くあります。それは人間であるが為に識る感情ではありますが、親が子を失う、子が親を失うことの悲しみは、私も早くに両親や妻を失い寂しく切ないことを身にしみて感じて居ります。
「お母さんのばか」の主人公幸ちゃんは私にまたそのつらさを蘇させられた本でした。とりわけ私がつらかったのは、幸ちゃんがエプロン姿で魚屋の前に立ち、品定めをしている写真でした。恐らくお母さんと買い物をしていたことを思い出し、魚の買い方を習ったと思うのです。十才の女の子が、どの魚がおいしいのかそれをよく知っていたのでしょう。私はそのスナップを見て心の中で号泣してしまいました。なんと健気なすがたなのかと、そして同時に家庭を守る責任感がひしひしと伝わって、そのページをどの位見つめていただろうかと思いかえした。
今日も幸ちゃんのように親を失う子はいるが、果たしてどのように暮らしているだろうか。私もそうでありました。幸ちゃんはささやかな幸せで充分だと言っています。しかし、そのささやかな幸せでさえ、お母さんの死によって皆心を閉ざし、笑いが消え、目標を失ってしまいました。そしてそのエネルギーを回復するまでは本当にたいへんな時間も必要です。この本を識り、悲しい過去だけが私を誘うようですが、今に生きるすべての人にもう一度家庭の大切さを考えて欲しいと願うのは私ひとりではないと思います。
ともすれば家庭がないがしろにされている昨今のこの国の姿です。命に限りはありますが、幸ちゃんの詩を多くの人に読んでいただければうれしいことです。そのことが強く伝わる本だからです。

「お母さんのばか」
写真:細江英公
発行所:窓社  〒169-0073新宿区百人町4−7−2
Tel.03-3362-8641 Fax.03-3362-8642
http://www.mado.co.jp


◆今月の隆眼−古磯隆生

−まちが変わる−

久し振りに三鷹のまちを散策しました。一昨年から自分の住んでるまちをもっと知ろうということで仲間と‘my いいとこ探し’を始めていますが、歩行者や自転車にとって快適なルートやスポットを見つけ出し、市民に配るマップの作成目的で市内の地域を見て回っています。前回作成したマップが好評で、あっという間に3000部が捌けたのに気をよくして次なる地域のいいとこ探しです。
前回は市内でも中心部にあたる地域で道路も碁盤目状に直線で構成された街並みでしたが、今回は市内では居住環境のいいと言われてる比較的樹木や畑の多い地域を廻りました。道路は嘗ての地形に沿ってできた曲がりくねった道の多い比較的起伏に富んだ地域です。以前にもこの地域を見て廻ったことがあり、数年ぶりに廻ってまちの変化を思い知らされました。結論的に言いますと、残しておきたいいい場所が開発され、大型マンションや建て売り住宅街に変貌してることでした。前回のマップ作成時のお勧めスポットが開発されやはりマン
ションに変貌しましたが、良くも悪くも街並みに決定的な影響を与えます。
大型マンションはそれなりに空地や緑地を設けなければなりませんから環境の整備に寄与する面が多々ありますが、それでもその大きさが周りに馴染まないケースがよくあります。突然姿を現した大きな建物は地域に違和感を巻き起こします。建て売り住宅群は地域の特性と無関係に密集して建てられることが比較的多いので、違和感はかなりのものです。
快適な街並みと快適な住環境への思いは一人一人の日常生活を通して培われる感性ですから、理不尽な開発への抑止にはその積み重ねが連動すると思います。


◆様々情報

前回の菅井研治さんの「世界一静かなクルマを楽しむ」への感想が寄せられました。

「わたしも10年間乗ったBMWを先日プリウスに乗り換えました。静かですね。そして、親切。まず、朝、スタートすると「今日は○月○日、何曜日です」と、タイミングよく言ってくれます。帰宅すると「お疲れさまでした」です。アイドリングは無いので、スタートが心配ですが、大丈夫。スッと出てくれます。他にも日本車ならではの細やかな心使いがあってさすがです。まだ、慣れないところもありますが、わたしの車の買い替えは、いつも10年以上なので、我が愛車として仲良くやっていこうと思っています。」