★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.31

◆今月の風 : 話題の提供は 菅井研治 さんです。

−世界一静かなクルマを楽しむ−

もう、20年も生活をともにしている私のクルマは、一年程前に世界一静かなクルマへと変身をした。どういうこと?と思われる方がほとんどであろうが、ここに種明しをしようと思う。
世田谷を拠点に全国的に活動をする、日本EVクラブというユニークな団体がある。その活動のひとつに“手作りEV”(EVは、electric vehicle、電気モーターで動くクルマの略)を楽しむというものがある。読んで字の如しであるが、EVを自分たちで作ってしまおう、エンジンをモーターに載せ換えてしまおう、そして皆で走らせ感心したり感動したりしているのだ(ちなみに私はクラブメンバーなのだが・・)。
しかし、ここまで書いたにもかかわらず、私の愛車は電気で走るように改造をしたわけではない。ご存知のように、電気で走るEVは、環境に大変優しく、また騒音も皆無に等しい。が、残念ながら、私のクルマは実は信号待ちなどで停車したときにエンジンが止まるアイドリングストップカーへと改良されただけである。それも、何かの改造を加えてというのではなく私がキーをオフにして止めているだけ(やっとテーマにたどり着いた)、信号待ちなどの停車中に世界一静かなクルマになるという、そういったストーリーだったのだ。正確に言うと、オペレーターの考え方、すなわちソフトウエアーのバージョンアップを図ったといっていいだろう。アイドリングストップの機能のほか、先をよく読んで無駄なところでアクセルを踏まないという機能も追加した。
クルマやバイクは現在に至るまで、ほぼ全てエンジンで走るものとされてきた。即ちエンジンの音やアイドリングの問題は、ある程度許容されてきた。しかし、排気ガスが目に見えるディーゼルエンジンのアイドリング問題などに始まり、アイドリング不要論が言われるようになり、また、自動車メーカーの新車開発、特に燃費競争の中でとりわけアイドリング時の無駄に使われる燃料のカットにも注目が集まっている。
環境問題が叫ばれる中(特に地球の温暖化、もちろんそれだけに限らないが)クルマを走らせることによる環境への負荷は甚大であるのは周知の事実である。クルマを扱う仕事柄この問題を放っておけない私としては、クルマを使う側の立場として、明日の子供たちの環境を守りつつまた、我が家の家計をも助けるアイドリングストップを楽しむ?ようになったのである。そして、その副産物(オマケ)こそが世界一静かなクルマのお話だ。
我が家でもう一台所有する世界的に話題となったハイブリッドカープリウスは、元気に走って燃費は以前の車の1/2〜1/3、騒音は間違いなく半分以下、信号待ちではやはり世界一・・・である。
先日、とある交差点で助手席に乗った友人の言葉が、妙に耳に残っている。

“このクルマって、恥ずかしいくらい静かねぇ・・・・”


アイドリングストップ:
たった5秒のストップから効果があります(関係多方面からの調査より)東京都内に登録されているすべての自動車が(約400万台)アイドリングを毎日トータル10分間ストップできたとすると、一年間で燃料約20万キロリットル(ドラム缶100万本分)の節約ができます。(環境庁データ)現在のクルマでは、バッテリーやスタータモーターなどの耐久性での問題はほぼゼロですオーディオやエアコンの使用に際して若干の不便もありますが少しずつ、楽しく挑戦です

新しい時代のクルマ:
排気ガス対策を強いられた時代のエコカーたちは、極端に走りを犠牲にしてしまったため多くの我慢を強いられる楽しくない乗り物という印象が強かった。しかし現代のエコカーたちは違います。バッテリー、モーター、電子制御システムどれをとっても世界一の技術が集結して、ハイブリッドカー、EV、新しい燃料のクルマさらには燃料電池をメインにしたFCEVにいたるまでドキドキわくわくのそんなクルマたちが活躍し始めています。
            インターシティオブジャパン 代表 菅井研治
 


◆今月の隆眼−古磯隆生

−風−

風の感じ取り方は様々にあります。この時期ですとうちわから送られる風はとても気持ちのいいものですが、今日は先日とても楽しく‘風を観た’話をしたいと思います。
東北が梅雨入り宣言した日たまたま宮城県蔵王にいたのですが、そこで見入った光景です。前日の天気とはうって変わって朝から雨模様、午後に入ってその雨は本降りになっていきましたが同時に風も多少強く吹きだしていました。お茶を飲みながら目の前に拡がる緑濃い樹林を何気なく眺めていましたが、知らず知らずのうちにその樹林に見入っていました。何しろ樹林の枝がとても楽しそうに踊っているではありませんか。それらの動きはさながらフルオーケストラを見ている様と重なっていきました。各パートはそれぞれ違った身の動か
し方をしますが全体はダイナミックな調べを醸し出します。つまり、目は様々な‘乱れ’を追いつつも耳は心地よい調べを感じ取っており、これは実に感覚を刺激する状態にあります。
樹林全体の揺れは指揮者の指揮棒に合わせて流れるようですが、樹木それぞれの枝に目を凝らしてみるとこれは実に様々な揺れ方をしています。同じ強さの風でも樹木それぞれは高さや枝の張り具合で風の受け方も異なります。同じ樹木でも高い位置と低い位置では違った揺れをし、枝の張り方の違いで揺れの速度も異なります。これに風の強弱が加わるのですからその動きは実に多様な揺れ動きを見せてくれます。更に葉の裏と表とでは光の反射が異なり、風の具合で違った色彩を見せますから、揺れ動きだけでなく色彩的にも破調的に変化
が演出されるわけで、あたかも‘山が笑う’がごとく実に楽しい光景を見せてくれました。
この時期、鬱陶しい梅雨を楽しむひとつの方法かも知れません。