★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.26

◆今月の風 : 話題の提供は 巌 隆吉 さんです。

−都市の美観と電線地中化について−       

先日、小野寺さんの奥さま陽子さんの記事を拝見して色々と感じることが多くなっています。小野寺ご夫妻のように私たちも大いに夢を追い続けたいものです。
お亡くなりになりました小野寺さんとは、三鷹市の市民プラン21の第1分科会でご一緒でした。そのグループには建築屋さんのお仲間が小野寺さんを始め鈴木さん、古磯さんなどと大変多く、大層刺激を受け勉強になりました。都市計画等についても、私たち素人は疎い面が多く、その方々の薀蓄を吐露した活発な議論には、到底ついてはいけなかったなとしみじみ思い出しながら、只今昔の資料などを紐解いています。ただ、その中で都市づくり、街づくりも『五感』を優先しなければということが深く印象に残っています。確かに『五感』が納得出来るものでなければとても美しい街など生まれないということでしょう。さらに平易にいうと『五感』を満足させることにより広義の都市美観が達成出来るということだと思っています。
 さて、三鷹市は『緑と水のまちづくり』を標榜して、それなりにその目標を達成しつつありますが、反面街そのものの美観はどうかなというと、まだまだ大変お粗末と言わざるを得ません。特に、最近の電柱の林立、電話線やケーブルテレビのケーブル等で蜘蛛の巣のように張り巡らされた住宅街、その上、大きな電柱の上に大型トランスまで載せている情況を見ると、まるで工場地帯さながらです。醜い都市に化しています。果たして三鷹の街はこのようなことで良いのだろうかと絶えず煩悶しています。第1分科会でも何時も美観上と交通事故の減少の必要性から電線の地中化が議論されていましたが、その地中化はまだまだ夢の中の夢になっています。35年前ドイツのボンを訪ねた時、電線の地中化により綺麗な街なのに感心しましたが、今の日本の都市を何とか美しい都市にすることは難しいのでしょうか。
都市の美観化を叫ぶ三鷹市、日本の他の都市に先行して『電線地中化』を一歩でも二歩でも進ましたいものです。それらのことが実現すれば、自ずと亡くなった小野寺さんも天上でさぞやお喜びのことでしょう。お互い何事も絶えず『夢』を追い続けましょう。 
巌 隆吉
  
◆今月の風+1

昨年の9月に話題提供して下さったアメリカ在住の岸本雄二さんから、朝日新聞に投書された原稿をRyuの目の読者の方々に紹介して欲しい旨の依頼がありました。

−権利と義務と誇り、北朝鮮拉致事件を考える−

北朝鮮政府による拉致事件は日本の国権と日本人の人権を侵害しました。これは即ち国際社会の只中で日本国と日本人が侮辱されたと言う事です。日本の政府に誇りと自信を持って、断固とした態度でこの問題に取り組んでもらいたいと願うのは、私だけではないと思います。
ここで権利について少し触れてみたいと思います。先ず、真の権利とは与えられるものではなく義務を遂行した後獲得するものです。獲得した権利は正しく、しかも責任を持って使われなければなりません。これが民主主義の原則です。政府も国民も義務を怠ったり権利を間違って使ったりすれば法によって罰せられます。国民によって与えられた権利を正しく使って国家と国民の安全を保障するのは日本政府の義務です。ところが日本政府だけでなく日本のメヂイアも五人の拉致被害者が帰ってきた時点で、この五人に関しては一件落着と思っているかのようです。この事件は確証のある国家間の拉致事件です。北朝鮮に対する罪と罰
と拉致された五人の日本人のための保証に関してはまだ何もなされていません。拉致家族の猛追に会って日本の政府は、まだ北朝鮮に残されているかも知れない日本人を探すため、屁っ放り腰ではありますが外交手段で問題解決を試みています。当然、より積極的な外交に切り替えて交渉に当たってもらいたいと思います。国民の安全を守ることが政府としての第一義務であると考える時、日本政府が義務を期待通りに果たしているとは言いかねます。
私は米国生活41年の日本人です。いまでも日本人国籍でいる理由の一つは、日本人であることに「誇り」を感じているからです。しかし、最近その「誇り」が一枚一枚削り取られて薄くなってきました。海外に住んでいますと日本政府の主義主張のはっきりしない弱腰外交が特に目につきます。
国民が政府に与えた国を司る権利が国民の安全保障のために正しく使われているとは言い難い状況下で、しかも自国の上を他国の砲弾が飛び、領海が侵害されても何も出来ない国に住んでいる国民は、どう考えても安全が保証されているとは言えません。自国民の安全を保証できず、そのために与えられた権利を有効且つ正しく使っているとはいえない政府を持つ国を独立国と呼べるでしょうか。
現在、正式に戦争宣言がなされている戦争は世界に31あると言われています。このように不安定で物騒な世界情勢を考える時、国家と国民とが協力して民主主義の前提である権利と義務を正しく遂行し、日本を世界に恥ずかしくない一人前の独立国家に育てて、「誇り」の持てる国造りをすることこそ急務だと思います。私の国籍はその時にまた考えることにします。
岸本雄二



◆今月の隆眼−古磯隆生

−雪に耽る−

先日の大雪のころ東北地方を回り、しばらく振りに雪の世界に包まれてきました。大雪で被害を受けられた方々や、やっかいな思いをされてる雪国の方々には不謹慎かも知れませんがお許し下さい、西の方で生まれ育った私には心弾み、感覚を蘇生されるものがありました。
純白な雪に包まれた空間は距離感を喪失させます。雪山のアンジュレーションは画家に女体をも連想させます。木立は雪を背景にその姿の美しさを際立たせます。陰は様々な白の表情を演出しその形状を浮き立たせます。目前の雪景色はこんなことを感じさせました。
一方で、真っ白な雪原に穿たれた黒い水路の条はあたかも地表の内側を垣間見せる深い割れ目を私に連想させました。<表皮>。雪は“色世界”を覆い尽くし、気配を拒む白一色の世界に変身させますが、それは“生”の息吹を雪のオブラートで包み込むかのようでもあります。オブラートの下でうごめく世界は外からは感知しづらいものですが確実にうごめいており、雪解けはその日常のうごめく“色世界”を再び現出させます。自然界のダイナミズムは人間世界を時に一枚のベールで覆いますが、それはあのサルバドール・ダリの‘海の皮膚を引き上げる’絵画にも似た光景を彷彿させ、シュールな世界への思いは止めどなく拡がり、やがて拡散、消滅してゆきました。
久し振りに雪世界を目の当たりにして妄想に耽るひとときでした。



◆今月の味覚−榎本久(羽前)

今月は趣向を変えて…いつものレシピーではありません。

−uzen短歌−

・串刺されあげくに炙られ叩かれる 食べるは人間あわれな鰹

・目をむいて鍋に浮きてるその顔は 許しを乞うて泣いている鱈

・首もがれ身を割かれしの鯵達よ 今宵の主役はそなたに授く

・つややかムラサキ(醤油)色したその肌に 湯気が立ちこむ煮えた芋かな

・しこしこと歯にからまるる味の妙 今宵の肴は黒きこんにゃく

・煮え湯飲み油でいたぶる荒療治 みごとな歯ごたえ牛蒡のきんぴら

・人肌の燗をつけてと客言えば 吾忘れしのその温もりを

・旨かった破顔一笑確かありや 大根めしを誉める客あり