★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.17

◆今月の風 : 話題の提供は金森保夫さんです。

−ピロリ菌の話−
 
 村の渡しの船頭は今年60のおじいさん・・・・子供の頃歌った歌ですが60才というのは本当におじいさんという感じでしたが、自分が還暦を迎えその歳になってしまいました。でもまだまだ生涯現役の心意気です。今回、初めて投稿させて頂きますが健康の話をひとつ!

 30才頃から何度となく胃潰瘍を繰り返し苦しんできました。昔は胃潰瘍を手術で切り取っていた時代が有りましたが、私が発病した頃には良い飲み薬が開発され、かなり良い状態まで治療出来ました。しかし、ちょっと具合が良くなったからと薬をサボったり、ストレスが溜まったり、寝不足が続いたりするとすぐ再発です!その都度、胃の不快感と痛みに悩まされ、上達したのは胃カメラの飲み方だけという何とも自慢にならない状態でした。昨年暮また調子が悪くなり自宅近くの診療所に治療に通いましたが、そこで「ヘリコバクター・ピロリ菌とは」というポスターを目にしました。どうも私の胃潰瘍の繰り返しはこいつのせいではないか?と思い、担当医師に相談したところ・・・「ピロリ菌を飼っていると、胃潰瘍の原因になるし、胃ガンになる可能性もある」と驚かされ早速検査をしました。私は吐き出した息からピロリ菌を調べる検査(呼気検査)をしました。基準値3.0以下の所、何と9倍の27.5の数値が出てしまい、立派な保菌者を証明してしまいました。そもそもピロリ菌は40代後半以上の人ほとんどが子供の頃の飲み水が原因で保菌しているそうです。今の水道水の様に消毒が完全でなかったり、井戸水を飲んだりしていたのが原因の様です。体に疲れが出て胃の働きが悪くなると正体を表し活動する人が居る様です。強い胃液の中では菌は存在しないというのが定説でしたが、このピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っていて、胃の中で大量のアンモニアを作ることが出来、このアンモニアで胃酸を中和して酸性の胃の中に住み続けているという事が分かったのはここ数年の事です。(この原稿の為勉強しました)

先生から除菌治療について説明が有りました。
 1)抗生剤(サワシリンカプセル)を1週間、朝夕食後続けて飲む。
 2)それから1ヶ月間禁酒を守ること。

ただ抗生剤を飲むだけの簡単な治療ですが、その後1ヶ月の禁酒がなかなかきついものでした。「時々除菌出来なかった人が何人か居ますが、大体少しでもお酒を飲んだ人です。」と釘をさされました。ということで予定表をチェックし、一大決心をして、1月中旬すぎ(一通り新年会が終わった後)に治療に挑戦しました。私の場合、ひどい下痢に1週間悩まされましたが、何とか1ヶ月の禁酒を守り、治療終了しました。再検査の結果、数値は何と0.81となり除菌は成功しました。その後3ヶ月経過しますが、今までの胃の不調はうその様にすっかり無くなり快調そのものです。もし以前の私のように胃潰瘍、十二指腸潰瘍にお悩みの人がこれを読んでくださった方の中にいらしたら、是非、除菌治療をお薦め致します。
 


◆今月の隆眼−古磯隆生

『二つの試み』−no.17
 土、日にかけて以前設計させて頂いた住宅を二つ尋ねてきました。一つは「‘入り江’をもつ住宅」としてこのRyuの目のno.12(2002年9月発信)で紹介させて頂いた岡山の住宅です。‘入り江’とは道路から敷地裏まで貫通する巾1間、長さ9間ほどに及ぶトンネル状の空間で、この住宅のアプローチ(心身を癒す器としての住まいへの導入路)、玄関、光庭が組み込まれており、“気分転換装置”として提案した空間です。この空間が実に生き生きしていました。アプローチにはドウダンツツジや種々の植物が植えられ、季節の変化が日々の生活の中で感じられる、気分転換と同時に癒しの空間として生成されていました。居住者が自らの住まい方を見つけ出していく過程を見ることが出来、設計者として喜びを覚えた出来事でした。
 もう一つは瀬戸内海を眺望する「牛窓の家」で、ここでは設計者の全く想像しなかった住み手からの提案がされてました。その提案とは…空中露天風呂!斜面地に建つこの住宅は竣工してからかれこれ8年程になりますが、屋根は斜面に沿った片流れ屋根になっていて、一番高いところで地上5メートルほどです。その頂上付近まで架台を組み4畳程の露天風呂を自らの手で実現していました。さすがにこの家の設計者が心を痛めることを配慮されたのでしょう、正面からは隠れるように工夫されており色調も建物の外壁色に合わせて真っ黒に塗られていました。勿論、もともと浴室からは海が眺められるように設えてあります。が、住み手はこのすばらしい瀬戸内海の眺めをもっとどん欲に味わい尽くしたいと考えたのでしょう。すすめられて私もこの露天風呂に入りました。もともと裸好きの私ですが、空中で裸になって瀬戸の海を見下ろす快感には代え難い興奮を覚えました。鶯、雲雀の囀りに包まれ、ゆったりと湯に浸かって杯を傾け、変わりゆく薄暮の瀬戸の眺めを満喫する…いやはや驚かされました。私はこの露天風呂に命名しました…“漂空の湯”…これは私が密かに自分の為に考えている戒名の中からとったものです。
 住み手と設計者の住まい方についての交感!…設計冥利です。



◆今月の味覚−榎本久(羽前亭主)


「クレソン」私が料理の世界に入った37年前のそれ以前、私はステーキなどと言う代物は口にすることもできなかった。もしそれを実現しようとするならば、当時の給料の殆どは消えるはずであった故に、生きている間一度でいいから分厚いステーキなるものを目一杯食べたいものだと思った。
しかし、世の中とは不思議なもので、それまで超極貧の食生活を送っていた私がひょんなことからある高級ホテルの料理人として勤めることになった(もちろん皿洗いから)。この日を境に私の食生活は一変し、長年の夢であったステーキさえもいとも簡単に食する(それもタダで)身分になってしまった。高級ホテルですから和・洋・中ありとあらゆる食材がそこら中にあり、いつでも食べることが可能だった(もちろんこっそりと)。いつしかすべての高級食材を食することになり、あの極貧のころのステーキのことなど忘れてしまっていた。こうなると人間わがままなもので、食べることに興味が湧かず、食事は“お茶漬け”に勝るもの無しとのたまうのであります。
「衣食足りて、礼節を知る」…本来この様な人間に出来上がればよろしいのですが、未だその境地にはほど遠くあさましい毎日を送っているのは生来のものかと困悪しきりの体(てい)であります。
 さて表題のクレソンのこと、前述のごとく高嶺の花だったステーキには必ず<クレソン>が付いています。ステーキの注文ができない私にとってはあの添え物のクレソンがやたら気になっていました。牛肉が高級だからあの野菜もも相当の存在の野菜だろうと決めつけておりました。なにせ、ステーキにはインゲン、人参、マッシュルーム、芽キャベツ等の野菜も添えてあったのですがそれが皆複数ずつついているのになぜか<クレソン>は一本、たった一本しかついていなかったのです。だから<クレソン>は“おそれおおい”野菜なのだと思いました。
 時が移りまして現在進行形で書かせて頂きます。あの<クレソン>は八百屋さんに行きますと一把百円位で買えます。おそれおおくない値段です。今私ははその<クレソン>を沢山買って適当に切り、オリーブオイルでさっと炒め、塩コショウと醤油をちょっと入れ、味を調えてワインの友にしています。
青春時代のニガイ経験や淋しさなど、一本の<クレソン>が何か語ってくれそうで忘れ難い野菜です。