★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.11

◆今月の風 : お休みです
 

◆今月の隆眼−古磯隆生

  • 中部空港建設事業費削減とデザイン -

少々前の話になりますが、朝日新聞7月5日朝刊トップに掲載された「中部空港建設1200億円節約」の見出しの記事はまだ記憶にあるでしょうか。愛知県の伊勢湾沖で建設中の中部国際空港の事業費を15%圧縮するという内容です。コストを見直し、節約することに何の異論もありませんが、その中で少々引っかかる事がありました。「曲線の美→直線の利」との小見出しです。旅客ターミナルビルの発着ウイングの形状を、折り鶴の羽をイメージした曲線状のものから直線に変更とあります。空港ビル建築で翼をイメージする形態を採用する例は目新しいことではないと思いますが、問題は「コスト削減→曲線形状→直線形状」、この短絡的思考、或いは短絡的方法の採用に日本の文化の未成熟度−“デザイン”が生活に根ざしていない証−を見ないわけには行きませ。
曲線或いは曲面状の形態が人の心象に与えるものは直線のそれとは全く異なるものです。ですから“もの”の表現としてどんな形態を採用すべきかは様々な要因を考慮して決定された形状と考えられ、デザインの核心を成すポイントと思われます。この施設の設計がどの様なプロセスを経て誰によって為されたか全く情報は持ち合わせていないのですが、記事のみから想像するに、「コスト削減」の御旗の元に有無を云わせず押し切られたように思います(設計者は断固戦い、オリジナルの曲線を生かした形状でのコスト削減案を提案し、体を張るべきところ。これがコンペ(設計競技)で採用されたデザインなら大問題に発展するでしょう)。
そもそもこの事業費の根拠は何であったのか?相も変わらぬ無駄な公共事業の予算付けの一つではなかったのか?そして安ければそれでいいのだろうか?今後長期にわたってこの空港の顔になる部分がいとも簡単に変更されることへの疑問を大いに感じる次第です。
                             


◆様々情報

前回の矢島さんのお話にお便りをいただきました。ご紹介します

「電気の話、その通り、と頷きながら読みました。夜中中、明々とついている工事中のサイン。これが1年以上続くのは変です。夜が明るくなりました。

アイルランド西海岸の町で、パブを求めて歩いた道の暗さを思い出します。「夜は暗いのだ。」としみじみ感じました。私が旅に出かける理由の一つは漆黒の闇を味わうためかもしれません。」