★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.5

◆今月の風 : 話題の提供は百名志保子さんです。

スローフード

2年程前、「スローフードな人生!」という本を見つけ、「スローフード」という言葉に出会いました。ファーストフードに代表される『早いことは良いこと』、『効率優先』、という社会の風潮に疑問を感じ、自分のペースを模索していた私は、この言葉に興味を持ち、その本を手に取りました。
この本は、イタリアに惹かれ10年通い続けたという島村菜津さんが、ある日、日本で「スローフード宣言」と書かれたポスターを見せられたことから、その運動を知り、現地に赴き取材した内容をまとめたものでした。1986年に北イタリア・ピエモンテ州のブラという小さな村で発祥した「スローフード」のムーブメントは、それぞれの土地で「スローフード協会」を発足させることとなり、2000年には世界38カ国、132の都市にあわせて約6万人の会員を持つようになったといいます。東京では、月刊雑誌『ソコトコ』編集部内に事務局を置き、「ニッポン東京スローフード協会」が発足、雑誌内で活動状況、情報を取り上げています。
「ニッポン東京スローフード協会」は、イタリア・スローフード協会の指針に従い、以下の活動を柱にしています。
■消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る。
■質のよい食材を提供する小生産者を守る。
■子供たちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていく。
国内の「スローフード協会」はいつくかの県でも発足されているようです。

何かと忙しくしていないと気が済まないかのように見える今の日本人。便利快適を求め、家事を簡略化し、時間のゆとりができたのかと思いきや、働くことに忙しすぎるのか、外での用事が多すぎるのか、家庭の中は閑散としたり、殺伐としていたり。外食やコンビニ弁当が活躍し、生命力に欠けるものをいただき、生命力に欠ける人たち。心も身体も信号を送っているのに、すっかり無視するか、病院で身体に負担をかける薬でごまかす。解剖学が専門の西洋医学では完治することのない病がこうも増えるのは何故なのか? 成人病が「生活習慣病」と改名されなのは何故なのか? 
日々の食を大切に、日々の生活をゆったりと楽しむことを、そろそろ思い出してもいいのではないでしょうか? 本文の、イタリア本部の会員の言葉を引用します。「すべては関係性の問題なんだ。人と人、人と自然のね。他者といかにコミュニケーションをとっていくのか。大地からの恵みをどうやって口まで運ぶのか。そういう根源的な関係性の問題の根底に食というものがあるんだ。だからそれは、とてつもなく重要な文化なんだ。そこにぼくらは“スロー”という言葉をあてがうんだ」 



◆今月の隆眼−古磯隆生

− まちづくりと政治…実験の継続 −

まちづくりは長い時間を必要とします。紆余曲折を経ながらも‘積み上げ’が求められます。躾と同じように日常の生活行為の中に根付くことが肝心と思われます。
統一地方選挙が終わりました。三鷹市では〈みたか市民プラン21会議〉の共同代表を勤めた女性が市長に就きました。〈みたか市民プラン21会議〉については以前ご紹介しましたが、2001年の三鷹市基本構想、第三次基本計画の策定に向け、素案段階から市民参加を実現すべく1999年10月より2001年8月までの2年の時限で市民の呼びかけにより自主的に集まった400名弱の市民の集まりです。市とパートナーシップ協定を締結し、市の全ての施策に関する提言書を作成しました。10の分科会に分かれ、800回に及ぶ会議を経て作成され、その提言が反映された基本構想、基本計画は議会で承認されました。その後いくつかの自主的なまちづくり活動が発生しています。ボランタリーな活動からNPO法人など様々な形態をとっていますが、ポイントは継続性と拡がり、そして関連する専門性と考えています。私も現在、‘居住環境整備’の面からボランタリーなまちづくり活動をしていますがいくつかの問題も感じています。一つは、継続性のある活動をしていくにはボランタリーな活動の限界も感じられ、それを如何に克服してゆくかという点。もう一つは、多くの自治体が都市計画コンサルタントによるマニュアル化された(金太郎飴的とも言われてる)いわば上意下達式の整備指針を作成してきていますが、問題は居住者による、その地域に根ざした独自の居住環境づくり、居住環境の底上げで、それを実践していくにはプロフェッショナルな活動の必要性を強く感じており、その意味でその地域に居住する各専門家が自分の生活している地域のまちづくりに専念できる環境の形成がこれからの課題と考えています。
この市民参画によるまちづくりは緒についたばかりで、終わりのない実験が継続されることになりましたが、良くも悪くも前例を作っていくことになります。