★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.3

◆今月の風 : 話題の提供は村上祐子さん

−絶滅寸前!ジュゴンのはなし−

皆さんは、沖縄に世界的に貴重なジュゴンが棲んでいるって知っていましたか?人魚のモデルと言われたジュゴンは、オーストラリア北部から東南アジア、インド洋、東アフリカの熱帯から亜熱帯の浅い海に、世界で約10万頭が生息しています。台湾、八重山諸島ジュゴンは近年目撃情報が無いことから、絶滅したと言われていますが、沖縄県名護市・東海岸周辺に約50頭以下が生息していると言われます。
ジュゴンは、海牛目に分類される海棲哺乳類の一種で、クジラやアザラシなどと同様に一度陸にあがり、再び海へと戻った哺乳類の仲間で、ジュゴン属とマナティー属に分かれています。クジラが獲物を追いかけて海へ生活の場を広げていったのと対照的に、ジュゴンは敵から逃れるために海へ生活の場を移していった平和的生き物です。体長3m、体重400kg、妊娠期間は13ヶ月〜15ヶ月、授乳・育児期間は18ヶ月、寿命70年と、ライフサイクルはとても人間に似ています。雌は前ひれの横に乳首があり、子供を抱きかかえるように授乳している光景が、まるで人間のお母さんがおっぱいをあげているのと同じ様に見えることから「人魚伝説」が生まれたと言われています。
そのジュゴンが今、絶滅の危機にさらされているのです。アマモやウミヒルモと言った海草しか食べないジュゴンにとって、沖縄の赤土の流出は、食糧である海草の生長に影響を与えるため、とても深刻な問題ですし、哺乳類であるため3〜5分に1回の割合で呼吸をするために水面に浮上しますが、定置網などに絡まり窒息する例が後を立ちません。そこに追い討ちをかけるように米海兵隊航空基地建設が強行されようとしています。
海草しか食べず、他を攻撃するすべも無く平和的に生きてきた「環境保護のシンボル」と言われるジュゴンを守れるのか、「とどめの一撃」を食らわすのか、深刻な状況です。
                           


◆今月の隆眼−古磯隆生

−古民家ブーム−

先日、近頃古民家の再利用がブームになっているとのテレビ番組を見ました。移築して分譲住宅を始めているケースも紹介されました。がっしりした架構、木のぬくもり、高い天井(吹き抜け)、等々が魅力とのことでした。一時的な流行でしょうかそれとも意識の変革でしょうか。コスト的には通常の建築費より割高とのことですから、単なる流行ではないかも知れません。ライフスタイルの変化と関係がありそうです。
日本では住宅寿命が26年で欧米の1/2から1/3とのことでしたが、これは単純に、その原因が木造であるからとも言い切れません。50年、60十年の住宅は普通に見かけます。ですから、モノを大切にする国民性から見ますと意外な感じもしますが、心当たる節がないわけではなさそうです。バブル期をピークにした大量生産大量消費の発想がやはりまだまだ巣くっているのではないかとも思われます。
古民家の再利用は現在の住まい方の問い直しを迫ってきます。風を通し、四季の変化に順応する生活スタイルは人との交流や自然との共生を前提にしており、いわば“外”に開いたシステムです。そこではそれらを可能にする環境が整わなければ成立しません。それに対し、冷暖房完備、セキュリティーシステムの完備、機密性、明るさ、等を住まいの絶対条件にしている現代住宅の多く、とりわけ都市住宅は自己防衛的な、“外”に対して閉じた生活スタイルを余儀なくされており、対極に位置すると思われます。変な臭いのする汚れた風はあまり通したくないでしょう。安全もままなりません。ここでは、コミュニティーの再構築の問題が大きく立ちはだかります。
古民家に蓄積された住まう知恵は現代人に住まい方を、ライフスタイルを、再考させるひとつの手がかりを提供しているのかも知れません。