★ Ryu の 目 ☆ no.11

◆今月の隆眼 = 自然のダイナミズムと建築 =

広島県日本三景のひとつ“安芸の宮島”の名前で親しまれている厳島神社があります。海に巨大な鳥居を設けた神社です。華麗な平家納経でも知られているでしょうか。建物も海に張り出して建てられており、満潮時は船のように浮いた優雅な佇まいを見せてくれます。干潮時にはすっかり潮が引き、海底が顕わになります。するとその海底に、手鏡状に堀込まれた窪みに逃げ遅れた海水が溜まり、鏡池が出現するという具合です。海底デザインのなかなか面白いアイデアです。潮の干満を演出するこの厳島神社は、自然界のダイナミズムを建築に取り込んだ珍しい建物ということができます。

兵庫県小野市にある浄土寺浄土堂も自然界のダイナミズムを取り込んだ数少ない例の一つです。厳島神社が“水”であるのに対してこちらは“太陽 ”です。東大寺南大門を建立した僧重源・宋人陳和卿によるものですが、内部は天井を張らずに屋根を支える構造をそのまま見せる(化粧屋根裏)、当時としては破格な表現をしています。国宝の阿弥陀三尊像を安置するこの堂宇には像の背後にある蔀戸(しとみど)から西陽が直線的に射し込むようになっています。その西陽が射すと、木部に塗られた朱の色と相俟って堂内全体が燃え上がったようになり、その中で後光のさした三尊像が浮かび上がる仕掛けになっています。来迎の阿弥陀を表現したイリュージョナルな世界の出現です。

共に発想が雄大で、歴史的建物も違った角度から眺めてみると、面白い切り口が現れるものです。


◆通りすがり = 小学生へのまちづくり教育 =

子供達の教育環境が変わりつつあります。学力低下の問題がクローズアップされがちですが、やはり広い視野でものごとを考える芽を育ませる環境は重要でしょう。まちづくりに関しても大半の大人が無関心である理由を慮れば、子供の頃の‘躾’に遠因があるように思えてなりません。そこで、総合学習にまちづくりについての学習を導入し、子供の頃からその意識を醸成していくことができないものかと考えています。社会科見学で知るまちではなく、身近な日常の生活空間としてのまちを知るために。
まちづくりに対する意識は、たとえば、近所に突如高層マンションが建設されるといったことが契機になったりしますが、本当は、環境に馴染まないそのようなマンションがなんの抵抗もなく計画されること自体に問題をはらんでいると思います。
われわれは常に、‘被害者であると同時に加害者でもあり得る’というこの不条理な現実社会にあって、他者に対する想像力がより必要とされる状況に置かれていますが、そんな状況を克服していくには、子供のころからたとえば自分たちのまちの‘いいところ’を知り、まち像を育んでいく必要があるのではないだろうかと考えるようになってきました。どのようなプログラムを組んでいけばいいかこれから検討していきたいと考えていますが、みなさんのお考えをお聞かせいただければと思います。