★ Ryu の 目 ☆ no.10

◆今月の隆眼 = 通りへの表情 =

既にno.6でお話しましたが、建物は、それが個人の住宅であろうとなかろうと建ち上がった時点で‘社会性’を纏うことになりますから、街並み等への配慮が求められます。
街並みづくりはハードのデザインだけが問題なのではありません。どのような‘表情をもたらすか’と言う点も大切な要素です。最近は建物が大型化・複合化し、すべてのものがその内部に呑み込まれ、人々の活動や生活の様子が表に出にくくなってきています。住宅街では居住環境が不安定になり、自ずと自己防衛的な建物づくりになってきた結果でしょうか、通りに対して無表情に、関わり合いを拒絶するような住宅も見られます。しかし、やはり、通りに面して手入れされた花壇などが設けられているのを目にすると微笑ましいし、ほっとした気分にさせられることは日々感じるところです。
4年前に竣工した住宅や福祉施設などの複合施設(FGH相模原:ホームページの〈WORKS〉に掲載)では、街中での人々の活動が表に出る仕掛けとして通りに面してピロティー(注釈参照)を設けました。このピロティーを通して、その奥の2階レベルに設けられたこぢんまりした広場での保育園の園児とお年寄り(デイサービスセンター)の交歓風景、園児の元気な声が通りに発信されています。やはり街並みには‘潤い’と‘表情’が欠かせません。

[注釈]
ピロティー:建物の一階を柱だけで支えて開放し、二階以上の部分に部屋を設けるもの。


◆通りすがり = まちの風・三鷹まちづくり21 =

三鷹市におけるまちづくり活動についてお話しします。
‘まちの風’はわれわれの活動グループの名称です。三鷹市のまちづくりに新たな風を起こそうとの思いから命名されました。市民と市が協働で作成した三鷹市基本構想・第3次基本計画に基づくまちづくりを自ら実践するためのグループです。12人のメンバーが核になって、既に活動しているグループや新たに活動開始したグループと連携して幅広いまちづくりの活動を展開していこうという訳です。
このグループの特徴は、ハード面からのまちづくり(居住環境向上)をテーマにしており、メンバーの半分を占める建築や都市の専門家と、専門家とは異なる角度から居住環境を考えようとする人々から成り立っていること、ボランティア活動グループではなく、事業として展開するためにNPO法人化を目指している点です。
地方ではまち興しが叫ばれ、都会ではまちづくりが叫ばれています。同じ日本の中で一見似ているように見えますが、ベクトルの向いてる方向は逆です。かたや活性化、一方はむしろ不活性化。人口増加・集中、高層高密化、車重視、のまちづくりから脱却し、居住環境の向上がわれわれのテーマになっています。
いずれにしましても市民の主体的なまちづくり活動が定着しない限り住みよいまちは望めないと言えます。