★ Ryu の 目 ☆ no.7

◆今月の隆眼 = 気配 =

気配 … 私たちの日常からだんだん遠のきかけている感覚かも知れません。‘春の気配’など季節の予感にままあります。その慌てぶりに‘ただならぬ気配’を感じた…という場合もあるでしょう。しかし、総じて‘気配’を感じ取る生活が遠のいてきているように思えますが如何でしょうか。‘正確、精度’を求める現代社会は、漠然とする感覚的了解の世界を追いやってきていますが、結果、人は自らの感知能力を衰退させることになってきてはいないか…そんな風にも感じます。
住まいにおける‘気配’について考えてみます。嘗ての住居形式は、襖・障子などの間仕切で構成され、室内は融通無碍で変幻自在な空間を展開していました。用に応じた使い方を可能にする方式で、空間の連続性を前提に、様々に生活を繰り広げる仕掛けです。それは

       “気配を感じる空間づくり”

とも読み替えることができます。家族がそれぞれ別の場所にいても互いに気配を感じることができました。異常が生じれば、異常な気配を感じました。このことは家族としての生活にとって重要な応答の仕掛けです。現代がプライバシー重視の生活スタイルに変わり、住空間を様々に分断した結果、気配を感じ取る仕掛けを欠落させてしまいました。隣近所の関係も然り。何の応答もない、人の気配を感じない建物は不気味なものです。
分断された人間関係を回復させるためにも、また、時節の変化との応答のためにも、気配を感じとる空間づくりが住宅にもまちづくりにも求められてくるのではないでしょうか。



◆通りすがり = 市民参加の実験 =

“Ryuの目”の《その他の活動》のところで若干紹介していましたが、昨年の11月にその活動を終わりました<みたか市民プラン21会議>は全国的にも注目された活動でしたのでかいつまんで紹介してみたいと思います。
この活動は、2001年予定の三鷹市の基本構想見直しと第3次基本計画策定に対して市民からの提言を行い、これを反映させることが目的でした。半年の準備期間を経て公募(参加資格は市に在住か勤務者)され、375名が参加して1999年10月から2001年11月までの2年間、期間限定で活動した市民の自立的な組織です。比較的高齢の方が多かったのは、高齢化社会に入った日本の現状からすれば当然でしょうか。際立つ特徴は、行政が素案を作成・提案して市民の意見を聞く従来のやり方と違い、市による素案作成前に市民が白紙から提言を行うという新しい市民参加の実験でした。この実験に失敗すれば市民参加の新たな展開は大きな壁にぶち当たります。市民プラン21会議は活動開始に際して市と「パートナーシップ協定」を交わし、市民組織と市が対等の立場で協働して基本構想・基本計画の素案を作成することになりました。
参加者は10の分科会に分かれ、2年間で延べ700回を越える会議を重ねました。2000年10月には提言書『みたか市民プラン21』を提出しました。市側は当初市民側の提言能力に疑問と不安を抱いていたようですが、提言書の内容に安堵し、活気づいたようです(想像を超えた成果物でしたから!)。市民の提言に基づいて市は基本構想と基本計画の素案を作成・提示、それに対して市民側は意見書の提出、このやりとりを1年かけてそれぞれ2回繰り返し、2001年11月にその活動を終了し、三鷹市の基本構想と第3次基本計画が策定されました。市民にとって今後の課題はこの基本計画の実行・実践です。
このようなボランタリーな活動が初めてだった私にとって、この2年間の経験は私の建築観に少なからず影響を与えました。私の新たな活動のシーズになったと感じています。