★ Ryu の 目 ☆ no.3

◆今月の隆眼 = ランドマーク =

ニューヨークの国際貿易センタービルは、《アメリカ》の象徴のひとつでした。その瞬時の消滅は“都市のイメージ”をも消滅させたのかも知れません。
ある都市をイメージし易くさせる要素のひとつに“ランドマーク”というものがあります。目印や象徴となる景観的要素のことで、一般的には他に比べてひと際高いとか個性的であるとかいうものが対象になりますが、視覚性が強く、独自性の高いものを指します。その都市がイメージしやすく、わかりやすいものであるための大切な要素で、このランドマークとの関係によって自分のいる場所を認識したり、あるいは、遠くから帰ってきたとき、我がまち(あるいは村)にたどり着いたことを認識する目印であったりするわけです。国際貿易センタービルもそのようなニューヨークを象徴するランドマークであったと思われます。
配慮を欠く計画やビルの乱立は、人間の目によるこのような都市の認識或いは了解の構造を崩してしまうことになります。わかりにくい都市は利便性の面からだけでなく、心理面からもさまざまに人間生活にストレスというかたちで影響を与えることになります。ですから、その都市の特徴を引き出し、わかりやすい都市(まち)を作っていくには、自分の建物だけでなく、周りの環境との関係のあり方も考慮することが計画者(施主を含め)や設計者に強く求められているわけです。


◆通りすがり = 住宅メーカーの利用法 =

巨大住宅メーカー市場に小判鮫のごとき発想ではありますが、持ち家希望者の気持ちをくすぐる話をご紹介しましょう。その話とは、設計と施工の分離発注です。つまり、設計は建築家で、工事は住宅メーカーでと言うわけです。この不況に喘ぐ設計プロパーの者のいささかゲリラ的戦法。
住宅メーカーに依頼すると、1度か2度の打ち合わせで間取りがすべて決定され、あとはラインにのって決められた範囲内で各パーツや器具の選択が進められていきます。われわれから見るといかにも不十分です。いささか我田引水になりますが、われわれの場合はただ求められた間取りを提供するのではなく、その場所ではどのような住まい方が出来るかから発想していきますので、決まったパターンはありません。基本設計を扱うわけですが、住宅メーカーの住宅とはちょっと趣の違う住宅を手に入れることが出来ます。以前実際にこのような分離発注で設計を引き受けたことがありました。周りの家に比べて個性的だし、住み手なりの住まい方ができると好評でした。
設計から監理までをトータルに受けて責任あるものを提供するのが本来ですが、施主がそれぞれの状況に合わせて建築家をどのように利用するかも、今日的利用法でしょう。業界関係の方には迷惑な話?