★ Ryu の 目 ☆ no.1

◆今月の隆眼 =見立て=

かつてはよく聞いてた言葉ですが、最近はあまり耳にしなくなってるようです。辞書を引くと「選定診断、趣向、なぞらえ、見た目」などの意味が挙げられていますが、いずれも目利きや連想性を求めていることがわかります。中でもあるものを別のものと仮にみなして表現
する「見立て」−「なぞらえ」は建築や庭の表現にも見られるもので、いわば建築の連想ゲームもどき。よく知られる例では竜安寺の石庭があげられます。石を島に、白砂を大海に見立て、大海の中に島々が点在する光景を想像するというわけです。見立てはさまざまに現れます。地鎮祭における諸儀式(降神、昇神、草刈り、鍬入れ、鋤取り)然り。いずれも形態の類似性を手がかりに、連想によって意味を発生させる日本特有の手法であることに注目していただきたいのです。
生活の中に様々に想像を巡らせる仕掛けが用意されていることの面白さ、或いは、連想を巡らして自ら仕掛ける面白さ。自らの生活空間を演出する手がかりを与えてくれます。われわれの身近な環境には、このような想像を巡らせる仕掛けが少なくなっているようですが、建物を楽しみ、空間を楽しむイメージトレーニングは、自らの居住環境に対する“目”も養うことにつながる、大事なことのように思われます。


◆通りすがり

先日、青森市北国型集合住宅国際設計競技なる設計コンペが行われました。敷地はおよそ4000坪で、青森市の中心部にあります。私はここで、都市に《緑と水と丘(台地)》の挿入と、雪から解放される共用の生活空間、高齢者用を含む多様な住居タイプを提案しました。緑で埋め尽くされた中に、子供からお年寄りまでさまざまなライフスタイルの人たちが住めるコンパクトな居住空間を作る。平坦な都市空間に対しては人間の諸感覚を呼び覚ます仕掛けとしての起伏を台地という形で提案しています。共用空間は《光と風を感じ、雪を楽しむ》をテーマにしました。親水空間を持つこのような住環境が北国の都市の中に実現できればとの思いです。