★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.172

4月になりました。

樹齢2000年と言われる山高神代桜エドヒガン)は今年も見事な花を咲かせました。(写真添付)
この桜に対面すると、昨年亡くなられたある女流画家が偲ばれます。
弟さんを続けて亡くされ「落ち込んで絵も描けない状態に陥っていた」が、この桜を見て、「生き返った、本当に感謝いたします」と仰っていた。

我が家の桜が昨日開花しました。
神代桜の子孫とのふれ込みで7年前に苗木を購入したものです。
また、今の時期は5月の畑開始に向けた準備の時です。
苗作りに挑戦中!

トランプは危うい・・・世界が戸惑う。


では《Ryuの目・Ⅱ−no.172》をお楽しみ下さい。


◆今月の風 : 話題の提供は菅井研治さんです。

−お風呂場世界旅行−

先日仕事でクルマに装備されているオーディオの説明をお客様にした折に”このクルマでは 世界のFM放送が聴けますよ スマホをお持ちでしたら・・”といったような話になった。

Mさんはびっくり、音楽に関係するお仕事柄もあってか とても喜んでいた様子。そしてそれではと、私は最近お風呂でアメリカのピアノソロだけのステーションを聞いているという話を追加した。同じようにブルートゥース(近距離間データ通信、BT)を利用した話であることと私の中でお風呂でのリラックスタイムがマイブームになっていたから ついそんな話もしてしまったのだ。
不思議とクルマの話以上に盛り上がって その勢いのおかげか(笑)商談はスムースにまとまりそのクルマをお買い上げいただくことになった。

納車の際には、オプションでリクエストしてもらったSONYのブルートゥーススピーカーをクルマと一緒にお届けし、クルマの話はそっちのけでスピーカーとスマホの設定をして早速お気に入りの音楽とヨーロッパのFMラジオを楽しんでいただいた。
嬉しそうな”部屋の空気が変わった”といったそんな言葉がとても印象に残り私は帰路についたのだ。
その日の夜は防水の手のひらに乗るスピーカーをお風呂に持ち込み楽しんだことに違いないのでしょうね、Mさん。

スマートフォンウォークマンなどの音楽や、アプリケーションによって再生される音楽をイヤホンやヘッドフォンで楽しむのと同じように その音をブルートゥースでスピーカーやクルマのオーディオ装置に無線接続し再生するといったお話ですがこれがまだ意外と知られていない楽しみのような気がしてなりません。
ブルートゥースを利用することでスマートフォンは想像を超えた利用法がたくさんあります。
お風呂場世界旅行はその中の一つ、ブルートゥース内蔵で充電式の防水でコンパクトなおしゃれスピーカーと組み合わせたコトで出来る事だったのです。
そう、スマートフォンインターネットラジオのアプリをダウンロードすることもしておかないといけませんね(入手はとても簡単、無料アプリがたくさんです)。

世界のラジオ局を聞きながらゆったり湯船につかる、ついつい長風呂になってしまいますが そんなお風呂タイムを私は楽しんでいます。
最近は防水のスマホなんていうものも有り、それを聞けばいいじゃないかという話もありますが、昔のオーディオファンだった私には決定的に低音域が足りません。私の使うこのスピーカーは小さいし安価なものなのにもかかわらず 十分満足のいく音を出してくれますし電源含めワイヤレスですので 使う場所を選ばないという 新しい感覚のおもちゃになっています。

インターネットラジオや語学学習、その他本当にたくさんのスマホアプリを楽しむことも自由自在です。
無料のアプリも驚くほど多くあるのもありがたいです。
更にはこのブルートゥース、つながる物もスピーカーに限るわけではありません。
驚くほど多彩な機能を持つBT機器があり ちょっと自慢出来そうなアイテムが見つけられると思います。
まずはおしゃれなBTスピーカーを手に入れてみるのはいかがでしょうか。
街の大型電気店、BTをさらに楽しむ場合はネットで検索したり HYPER MARKET(原宿)、蔦屋家電二子玉川)などユニークなお店で自分にあった、楽しい何かを探してみては・・・。

スマホの価値がぐっと上がること請け合いですし ちょっと今までと違った へへっが見つかるかもしれません。

・菅井研治さんのホームページ  INTERCITY OF JAPAN
  http://www.intercity-jp.com/



◆今月の隆眼−古磯隆生
http://www.jade.dti.ne.jp/~vivant
http://www.architect-w.com/data/15365/
   Ryuの目ライブラリー:http://d.hatena.ne.jp/vivant/

−『大地の目覚め』その変遷・2−

57才の時、一念発起して高校卒業以降避けていた絵を再び描き始めることにし、次第にのめり込んで行くことになりました。
さて、6回目の出品となった2013年の第68回行動展の出品作は私にとっての記念的な重要な作品となったと前回綴りました。そのあたりの話をしてみたいと思います。
東日本大震災のあった2011年の第66回行動展への出品作あたりから何となく自分の絵に“行き詰まり”感を覚えるようになっていました。意識としては半抽象的な絵を志向するようになっていましたが、なかなか表現にその方向が見えず、どの様にしたものか先の見えない状況にありました。加えて、前年の夏頃からの鬱的状況と脳裏に焼き付いた3月11日の東日本大震災の壊滅的状況が重なって、“創作することとは?”との先の見えない不安もかかえていました。
その辛かった鬱的状態は1年半ほどで何とか脱出し、気力も次第に充実して行きました。東京と山梨を毎週行ったり来たりしていた半々生活から山梨主体の生活へと変わって行ったのが良かったのでしょう、やっと環境の変化にも馴れてこころも落ち着きを取り戻し、それ以前は月にせいぜい7〜8時間程度だった絵に向かう時間もずっと多くなっていました。絵に向かう時間が多くなってからは“雨上がりの水溜り”以外のモチーフにも挑戦するようになり、風景を抽象的に表現する試みなどもしていました。

若い頃惹かれた“都会の喧噪”は年齢を重ねるに従ってやがてストレスとなり、そこからの脱出を意図した移住によって得られた北杜の自然は限りなく感性を活性化させてくれました。それまでの自分にとっての自然が、“眺める”対象であったものから、“人間を育んでくれている”との意識へ変化して行ったのは、畑で土に接するようになり、山や渓谷を彷徨する(トレッキング)ようになってから芽生えたものでした。四季の変化は豊饒をもたらす一方で過酷でもあることも身に染みて感じさせられもしましたし、その厳しさの中で生物が逞しく生き延びている事も見せつけられ、感動しました。

そんな日常の中、「大地の目覚め」の樹木を白樺のような白で描いてみたらどうだろうかとエスキースでたまたま描いた小作品がヒントとなり、2013年の第68回行動展の出品作を作ることにしました。
その頃は絵のサイズを自分で勝手に決めていて、100号を越える程の大きさのベニアパネルを黄金比(1:1.618)で作り、その上にパステル用の紙のボードを貼って描いていました。
この年に出品した作品は3点で、「大地の目覚め/白い記憶A,B」2点と風景を抽象化した「象」1点です。
(3点の写真添付…入選作は「大地の目覚め/白い記憶A」)

契機となった作品はブルーグレーと白の色調の「大地の目覚め/白い記憶B」です。構図を決めて白で樹木を描き進めていたのですが、さて、この先をどの様に作るべきか見い出せません。このままでは今までの繰り返しになってしまうと思い、集中して絵に向かい合うために絵の脇にベッドを設け、制作合宿の気分で寝起きすることにしました。朝起きてから寝る間際まで絵と向かい合います。1週間ほどこのような生活が続きましたが、ある時、スケッチブックに鉛筆を走らせていてふと思いつきました。モチーフは雨上がりの水溜まりに映った樹木です。水面の表情を直線の構成で表現し、樹木の自然な形体と対比的に扱い、“自然形態の線と幾何学的な直線が画面の上で織りなす世界”を作ってみたらどうだろうかと・・・。
そうして出来たその絵は、「“描く”ということはどういうことなのか」を感じ取るきっかけとなった、私にとって重要な絵となりました。これを進めていけば独自の絵の世界を展開出来るのではと思えるようになり、その意識は、故郷での初個展を翌年の2014年に開催しようとの決断に至らせてくれました。
このヒントを得てから気持ちが開かれ、自由な構成、イメージはどんどん繰り拡げられる思いでした。そして、長年携わってきた建築と絵とが私の中で通底した瞬間です。建築を志した時からこれまで建築と絵は全く別物で、交差するところはないだろうと考えていました。勿論、建築と絵は別物です。しかし、設計の初期段階での空間を構想する操作と画面構成を発想する段階は必ずしも別物ではない、感覚的には同じ次元ではないか・・・。
そこから以降の画面に中に円、三角、正方形などの幾何学形体が現れるようになりました。
そして初個展を控えた2014年10月発信のRyuの目・no142で建築と絵の『二足のわらじ』宣言をするに至りました。※1
数年後、“描く”ことを通して画面の上に“新たな世界”を作り出す方向性が徐々に見えて来ることになりました。建築探求の過程で遭遇した事象が、絵の世界の新たなヒントとなった「大地の目覚め/重奏」シリーズはそんな一つの作品です。※2

私の中で“日常の身のまわりに見られる事象のその背後或いはその向こうに在る世界を想像させる”そんな絵のイメージが培養されていき、平画面の中に新たな世界を作り出すモチーフとして、太陽・月・地球のメタファーとしての“円”、大地の表象としての山々や水平線、そして宇宙に浮遊する星々の拡がり、が目の前の水溜りに映った樹木と重なり合い、時間の経過が暗示された画面上で想像世界が繰り広げられる・・・時間と空間の織りなすそんな世界の創出・・・これが今の私の仕事です。

現在、「大地の目覚め」シリーズの他に「落」シリーズ、「遊 in green」シリーズ、「戯」シリーズがあります。遊 in green」シリーズ、「戯」シリーズはまだ小作品の段階で、いずれ大きな絵にしたいと考えています。

※1『二足のわらじ・・・』http://d.hatena.ne.jp/vivant/20141010
※2『重奏』http://d.hatena.ne.jp/vivant/20151010

◆今月の山中事情132回−榎本久・宇ぜん亭主

−昼下がりの悪夢−

やる気まんまんではあるのだが、景気の方の不都合で暇をもて余している。そんなある昼下がり、腕まくりしていた我が腕をさすった。そうしたら、網目状の皮膚が寄する波のごとく押されて行くではないか。手の甲まで行った波は扇状になって各指の根本で止まった。白日の下、さらされた我が腕を見て老化という実感を又知らされた瞬間だった。生気を失った皮膚は腕から手にかけてゆるみ、シワになっていたのだ。肌色でなく黄土色となった我が腕。若き頃みずみずしく太かった腕は見る影もなくなった。たとえ一瞬だったかも知れないが、そのようになったことに腹を立てていた。
未だ老人となったことを受け入れず、馬鹿みたいにそれに抵抗している。世の賢いご同輩はとっくに先を見すえて、自己鍛錬を課し、肉体の衰えをカバーしている方々がいて、そのことによって人生を謳歌されていると推察するが、あとさきを考えない私はそのことを予見することもなく怠惰な日々を過ごし今にある。それでもそのことに気づきはした。しかし、今更遅すぎた。


宇ぜんホームページ
  http://www012.upp.so-net.ne.jp/mtd/uzen/


◆Ryu ギャラリー
 今月の一枚は2月の銀座でのグループ展「第6回 WORK TEN」に
 出品した作品で「大地の目覚め」です。
  サイズはM100号(97cm×162cm)です。
  (パステル+アクリル絵の具)
  お楽しみ下さい(写真貼付)。