★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.167

短い秋も間もなく過ぎようとしています。
今年の紅葉には異変が起きています。紅葉する前に枯れてるのが見られます。

アメリカ大統領選挙は驚きの結果になりました。
世界は不透明で不安定な状況に突入し、民族主義的、保守的傾向が強まり、様々に変化せざるを得なくなるでしょう。
日本でも防衛問題から憲法問題がこれまで以上に重要な問題となりそうです。


○福島の友人より

●11月6日NHKスペシャル「原発廃炉への道・ふくらみ続けるコスト」が放映されました。東京電力福島第一原子力発電所の事故による、賠償・除染・廃炉に要する費用です。事故当初は数千億円から2兆円との金額が見積もられましたが、すでにこの金額をはるかに超え現在13.3兆円という金額がだされ、これからさらに増えることになると報道されました。特に廃炉に要する金額は分らないとも言っています。
さらにこの金額の7割は国民負担であるとも。
国民への詳細な説明もされておりません。
3つの事故調査委員会の検証もされないままに、コストが独り歩きしていくような感がして危惧を感じざるを得ません。
このまま稼働すればいつの日かまた事故が起き、同じ議論が性懲りもなく続くことになります。段階的に稼働停止し、他の電力に切り替えるようにすべきと思います。
日本列島は活断層ばかりではなく、横ずれ断層も多いことが鳥取地震で明確になったばかりで、地震列島に供える基本は脱原発しかありません。
廃炉には40年と言っていますが、工程表ではすでにクリアされないこともあり40年以上はかかることは必定です。

新潟県知事選
 泉田知事の路線を継承するとした米山隆一氏が当選しました。
民意は柏崎刈羽原発を抱えて、すでに40年経過した一番古い原発ですから、福島の事故の検証を第一と県民は考えたと判断されました。
ただ泉田前知事は出馬しない理由を明確にしなかったことは残念です。

原発事故のその後の状況報道の減少
 福島県民は毎日、新聞等で状況はわかりますが、全てが解っているわけではありません。他県の地方紙、中央紙の記事は少なくなってきていることは否めません。すべてを公表して将来の事故に備えることが当たり前なのに、それが出来ないのは手前勝手な理論がどこかで働いているのでしょう。月刊雑誌「世界」には、毎月、原発に関する日毎の出来事が掲載されており(内容はなし)ます。
「風化」を防ぐには、報道による関心を常に持つことではないでしょうか。

●4たび除染
 道路の側溝は手つかずのまま放置されていましたが、仮置き場が決まったため、側溝の汚染土を搬入できると4たび除染を実施しています。屋根から流れた汚染水が土と混ざって側溝に溜まり、傾斜のついた地表面から側溝に流れた汚染水が放置されたままでしたがやっと堀上られました。しかし取っただけで、洗い流すことは後回しのようで5回目の除染が今後実施されます。本来は小学校の児童の通学路にもなっていることから一番先にやるべきでした。何でも後手になっています。

●避難地域の放射線
毎日報道されています双葉郡放射線量は、依然として線量が高い所があります。
8万6千人がまだ避難していますが、今年度中に避難解除するところは低くなっていますが、解除見通しが立たない地域は高いままです。

●被災地の自治体へ応援職員の大幅減少
東日本大震災・東電福島原発事故で大被害を受けた福島、宮城、岩手の3県を含む被災地に全国の自治体から応援で派遣されている職員数が昨年10月と比べて大幅に減少しています。復旧・復興のためには人的支援が欠かせませんが、派遣している自治体でも余裕がないためとのこと。今後は企業からの支援も含め人的支援の在り方を早急に検討してほしいものです。


では《Ryuの目・Ⅱ−no.167》をお楽しみ下さい。



◆今月の風 : 話題の提供は岸本雄二さんです。

−ローッキード事件のTVレポートに接して−

一般に事件、特に国家的大事件に関しては、単なる法的な追求だけでは、真の事件解決にはならない場合が多い。何故か。最近テレビで観た昔のローッキード事件を例にとって私の視点をより明確にしたい。
この事件には、金銭的汚職以外に、より大きな二つの目的が絡んでいた。アメリカの米ソ冷戦対策のためのアジア防衛と日本の国家防衛である。最終的には、この二つの目的が達成されたか否かが根本的課題であった筈である。しかし、このTV レポートでは、これらには一切触れずに法的追求に終始した。私に言わせれば片手落ちどころではなく、両手両足落ちであった。毎日放映しているテレビドラマであるかのように興味本位に扱われていた。もう少し詳しく説明しよう。

田中角栄首相と50億円の賄賂、ローッキード社のコーチャン副社長と全日空社との取引、などに終始したレポートであった。結果とし、手術は成功したが患者は死んでしまった話のよい例となった。日本は独自防衛をして、独立国への第一歩を踏み出せる機会でもあったのだが。50年の無駄を強いられることになった。ローッキード機購入には一兆円の予算が必要であったと言う。たった5億円、即ち予算の二千分の一の賄賂のために国家の舵取りに貢献出来なかっただけではなく、悪影響を与えてしまった。当時も5億円の賄賂事件に感心が集中して本質を忘れてしまったようである。その意味では、皮肉にもこのレポート番組は正しかったのかもしれない。勿論、賄賂を受け取ることは悪である。
もし田中角栄が5億円の賄賂を受け取らなかったならば、日本の針路は違ったものに成っていたかも知れないのだ。その賄賂ですらも田中自身の意思であったのかどうかもはっきりしていない。素晴らしい政治家を死なせなくてもすんだかも知れないのだ。大富豪であったなら、5億円程度の賄賂では、動かされなかったかも知れない。ローマ時代の政治家は、全員が大金持ちで、しかも無給であった。ローマ人は分かっていたのだ。

法の番人は必要であり、容赦なく厳しく取り締まらねばならないことは言うまでもない。法を重んじる姿勢の重要性は、ローマ帝国一千年の歴史を眺めれば、一目瞭然である。その上で、しっかりと法律の目的とその法が裁いている事柄の内容とを常に頭に入れておかないと、本末転倒になる恐れがある。そう考えてくると、田中角栄首相の逮捕は妥当で、彼の小ささの故であったとも考えられる。
そもそも田中角栄が日本の独立をどの程度考えていたかは、分からないままである。TVレポートには、是非この点も発表してもらいたかった。

歴史上で、金と女が政治やビジネスの世界で果たした役割は大変に大きい。中国やローマでの宦官(虚勢手術をした役人)の制度は、うなずけるところが多い。ついでに政治家自身も宦官にしていたら、歴史は大分変わっていたかも知れない。しかし、賄賂も宦官も必要悪であり、私は賛成出来ない。このレポートは、 映画「Z」を想い出させる。フランス映画でイヴ・モンタン主演のギリシャ政界と軍部の腐敗を扱った探偵映画である。映画ならそれでよい。50年後の今でも日本の自立に影響を及ぼし、今でも沖縄基地やアメリカの共和党大統領候補トランプ氏の発言に左右されている日本である。メディアの重要性と拙さを痛感させられたレポート番組であった。
2016年7月26日 悪い事件がその時代を反映するなら、良い事件もその時代を映し出しているに違いないなどと考えて、民主党大会でヒラリー・クリントンを初の女性大統領候補を指名したテレビニュースを観ながら。
岸本雄二


◆今月の隆眼−古磯隆生
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−個展顛末記・その1−

10月14日から20日まで、生まれ故郷の山口県宇部市で2回目の個展を開きました。会場は1回目と同じギャルリー小川です。なかなか落ち着いた雰囲気の広いギャラリーで、ちょっとした美術館と言った感じです。ギャラリーの一角には座敷が用意され、庭(和風)も設けられています。ここにはお茶出しするサービスカウンターも用意されていて、観賞後に座敷で一服できるよう設えてあります。(写真貼付)
展示作品は、昨年からこれまでに描いてきたものを含め、3号から130号サイズまでのパステル画45点程を準備しました。その個展の顛末記を2回にわたって報告したいと思います。
9月の第71回行動展(国立新美術館)に続き、10月始めの銀座でのグループ展「夏のあとさき」(ギャラリー風)を終えてから1週間ほどでの今回の個展でした。スケジュール的に詰まった中での合間を縫っての制作はなかなか思うようには捗らず、宇部に向けた山梨出発の前日まで描くハメになってしまいましたが、何とか予定点数をあげることが出来ました。大きな作品6点(100〜130号)はヤマト便で既に送ってあり、小品24点も早めに地元の画材屋に送って額入れを頼んでいましたので、残り10点ほどを一月足らずで制作し、持参することにしました。

10月11日午前3時半過ぎ、妻と三女の三人で車に作品を乗せ、暗闇の白州を出発。前日は早めに就寝はしたもののなかなか寝付けず、全員いささか睡眠不足状態ではありましたが、2回目の個展に向けての期待と不安の入り混じった、ある種の緊張感を伴っての出発となりました。前回の時は、白州から宇部まで凡そ900kmを13時間余りをかけて一気に行きましたが、さすがに厳しかった思いが残っており、今回は家族での付き合いもある岡山在住の長年の友人を訪ね、倉敷で一泊することにしました。
中央自動車道名神自動車道、中国自動車道、山陽自動車道を使って一路岡山を目指します。午前4時までに高速道に入ると高速料金の深夜割で3割引きとなる。長距離ドライブ故これを利用しない手はない。4時5分前にかろうじて何とか小淵沢ICに入り、セーフ! いざ岡山へ。3人で交代しながらの運転で11時頃岡山県牛窓町に到着。ここには20年程前に設計した別荘があり、杉板を使っていた外壁が長年の海からの風雨で傷んだのでサイディングに張り替えたと言うことだったので、その後の状態を見に。瀬戸内海に面した小高い丘にあり、眺めは抜群。数々の思い出のある建物で、以前Ryuの目にも登場。
サイディングへの変更は思ってた程の違和感もなく、まずはひと安心。その後倉敷に向かい、夜は倉敷美観地区の中にある居酒屋で、長年の友人夫妻と久々の再会で盃を交わしました。勿論、瀬戸内海の小魚を酒のアテに舌鼓
・・・12日間連続宴会の始まり!!。

12日、午前8時過ぎに倉敷を発ち一路宇部へ。途中、折角の機会なので久し振りに光市にあるいとこのお墓参り。墓石に刻まれた文字の中に佇む青ガエルが(写真貼付)お出迎え。心和む。さて、一般道を通っていよいよ宇部に入りへ。宇部に入ってからは私の生まれ育った場所などを巡り、夕方、逗留先の友人のゲストハウスへ到着しました。ゲストハウスでは既に夕食の準備がなされていて、歓迎の夕食会が催されました。ここは瀬戸内海に面した町ですからメインは当然のごとく魚。刺身の盛り合わせを中心に、宴は大いに盛り上がりました。
ありがたいことです。いささか飲み過ぎたか・・・・。

13日、朝10時前に会場となるギャルリー小川へ。会場には高校の同級生や美術部の先輩達が搬入、展示の手伝いに駆けつけてくれました。総勢10名程で搬入、展示や受付準備等々の作業の開始です。大きい作品の枠付け等の作業、画材屋さんから搬入された小作品の一部入れ替えも終えて、試行錯誤しながらの作品のレイアウト開始。途中、1時過ぎには地元紙である宇部日報の女性記者の取材を受け、展示が終わったのは午後の4時頃になっていました。
夜は、搬入、展示を手伝ってもらった人達も加わって、前夜祭おでんパーティー
さあ、いよいよ明日から始まりだ!!


◆今月の山中事情127回−榎本久・宇ぜん亭主

−ある俳優の秩父講演−

草の乱」という明治期にあった秩父事件を描いた映画と、ある俳優の講演を
聞きに出かけて行ったことを思い出した。(去年のこの時期だったと思う)
人っ子一人いない、山に囲まれた集会場のあたりだが、駐車場にはもう車が
あふれていた。係員にうながされて、パイプ椅子の並んでいるホールに歩を進
めた。ほとんどが老人だ。若い人などいないのではないかと思うほど見当たら
ない。「草の乱」は秩父の農民と自由民権運動が合体した事件の映画である。

まず、すっかり白髪となった俳優が登壇した。眼光は若い時のままのようだが
元気はない。マイクのせいかと思ったが、そうではない。声は張りがなく、時々
聞き取れないことがある。そんな状況がしばらく続く。耳をこらせば解るように
なったので、そばだてた。
俳優は自身の半生を語り始めた。私は彼の映画のイメージが強く残っている
ので、そんな人であるとレッテルを貼っていた。その彼ももう八十才だという。
その後、平和や反戦について語り始めた。顔をゆがめている。現内閣に対し
手厳しい批判が口をつく。言葉は厳しいが語り口は決して強くない。むしろ憂
うがごとく語りかける口調だ。時折言葉を失ったり、同じことを繰り返したりす
るが、反戦、平和に対する不動の姿勢はゆるがない。戦争という体験があった
からだ。それをライフワークとして長い間こうして講演していたのであった。

聴衆はその俳優の歩んで来た時代と同じ人が大半であった。 「草の乱」は
自由民権運動がこの国にも根ざし始めた頃と重なり、秩父がその「さきがけ」
であることを俳優は訴えにこの町に来たのかもしれない。
それから十日もしないうち、彼の死をテレビで知った。唖然とした。あの時、
体調は相当悪かったのではないか・・・菅原文太氏の死を悼んだ。  合掌


宇ぜんホームページ
  http://www012.upp.so-net.ne.jp/mtd/uzen/


◆Ryu ギャラリー
 今月の一枚は「戯」。
 先日の個展に出したものです。
  サイズは25.7cm×364です。
  (パステル+アクリル絵の具)
  お楽しみ下さい(写真貼付)。