★ Ryu の 目・Ⅱ☆ no.38

◆今月の風 : 話題は村上逸郎さんのチベット11日間の旅の4回目(最
終回)です。
        添付写真:ギャンツェ城、
             ジョカン(大昭寺)からポタラ宮を望む

ダライラマとパンチョンラマ」
17世紀にダライラマ5世により仏教と政治の政宗一致のチベット統治が始まった。ダライラマ観音菩薩の化身(活仏)、No2のパンチョンラマは阿弥陀菩薩の化身(活仏)とされる。両ラマとも涅槃に入れば、いろいろな宗教的兆候をもとに転生者探しが(秘密裡に)大事業として行われ後継者が決定される。ダライラマ、パンチョンラマは信頼、協力しあう関係ながら、人民解放軍による軍事介入がはじまると、1956年ダライラマ14世はインドに亡命したのに対し、パンチョンラマ10世はチベットに留まり北京政府と比較的融和の姿勢をとった。そのため、現在のチベットでは歴代パンチョンラマは認容されているのに対しダライラマ14世の話は一切のタブーであり、写真を持っているだけでも政治犯として投獄されるという。(チベットは世界一の投獄政治犯数とのこと)寺院を廻っていても歴代パンチョンラマの活仏像や大きな写真はいたるところに出てくるが、No1であるはずの歴代ダライラマの像や写真は気付いた限りデプン寺以外では全く見当たらなかった。もちろんデプン寺でもダライラマ14世の写真はない。なお、パンチョンラマ10世の死後、転生者探しが行われ1995年ダライラマ14世により幼い少年がパンチョンラマ11世として指名されたが、間もなく中国人に拉致され今もって行方不明(噂では北京で軟禁されている)という。代わりに北京政府が同年齢の別の少年をパンチョンラマ11世に指名し、現在北京に在住し、1年に1回パンチョンラマの本拠地の町シガツェに帰って来るとのこと。
「お終いとして」
教念寺さんのツアー参加の話があってから、かねてよりよく分からないところのあった仏教を少しまとめて勉強してみようという気になり(間もなく「還暦」を迎えること、それに寺の多い奈良に住んでいることも動機としてあったかもしれない)、時間もあったので司馬遼太郎空海の風景」を皮切りに、仏教、密教チベット密教ヒンズー教それにダライラマ関係の本を数ヶ月間手当たり次第読んでみた。そして実際にチベットに行き、仏教に関し分からないことが氷解したわけではないが、行くまで少し辟易としていたチベット密教のおどろおどろしさも、これも仏教の領域と素直に感じ取られるようになったようだ。それといつまでも心に引掛かったのが、天空都市チベットの風景とそこにはためく五星紅旗のこと。チベットの人々にとって本当に何がよい形だったのだろうか?「自治」とは「解放」とは「民族」とは?いろいろ考えさせてくれた。愉快だったことの一つに成都から動向した中国人男性ガイド、それにチベットで同行した若い中国人女性ガイドの2人のこと。二人ともときに観光ガイドの内容から外れる私の質問にとても人間的に開放的に自立的に会話に応じてくれた。ツアー中友人になった。中国も変わりつつあると感じた。   (了)


◆今月の隆眼−古磯隆生

−冬の風景−
冬のこの時期はまちの中の風景からも何となく色が失せ、数ヶ月前の色彩豊かな木々の紅葉が別世界だったかのように思い出されます。木々は葉を落とし、葉をたくわえた常緑樹は濃い緑を纏ってひっそりと佇んでいる様です。しかしこの時期でしか味わえない光景を見逃すことはないでしょう。そのひとつはケヤキです。葉をすっかり落とし、その枝振りを扇のごとくいっぱいに拡げたた大樹の姿はこの時期でしか見ることが出来ません。ケヤキ並木の木立はとても美しい。黒い直線的な枝が様々に重なり、蜘蛛の巣を想わせる透けたその様は新緑をつけた時とはまた別の味わいを与えてくれます。もうひとつは春の訪れを感じさせる木々の芽吹きです。近寄ってよく見ると数ミリの大きさの芽をつけ始めています。今年のようにとても寒いこの時期にこのような芽吹きを見つけるのは何か微笑ましくさせてくれま。芽吹きの始まった木々を遠くから眺めると紫烟を想わせる風情を醸しだしますが、あのわずかに赤紫を呈した色彩はまたこの時期ならではの色合いでしょう。


◆今月の味覚−榎本久(飯能・宇ぜん亭主)

−山中通信5−
山は静かに眠っている。針葉樹以外は皆衣を脱ぎ、己の姿をさらけ出している。しかし、垂直に伸びた枝々は左右対称やワイドになっていたりと葉のある時には想像出来ない形を持っている。稜線に透けて見える木々を見ると山の生活もまんざらでもない心持ちだ。
寒さは昨年来のまま続いているがピークは過ぎ、これまで以上の寒さはないだろうと土地の人は言う。と言うことは、いきなり史上最強の寒さの洗礼を私は受けたのかといささか怪訝な気持ちでいる。ここらも含めて関東地方は好天に恵まれ、有り難いことですが、日本海側の各地は大雪で大変だ。
庭にある「くちなし」の実を昨秋採って置いた。オレンジ色の実が今でも退色せずいる。町の薬局で買うと三、四粒で三百円位するはずだ。訳もなく得をした気持ちだ。なにしろ「ただ」だから。大和芋の皮をむき、適当にカットして、ミョウバン水に30〜40分アク出しをする。その後、割った「くちなし」の実をガーゼに包み、大和芋と一緒にゆでる。黄色に染め上がり、芋が柔らかくなったらぬめりをとる為にさっと洗い流し、「うらごし」にする。砂糖、塩少しを入れ、ゆっくり気長に「きんとん」を作るように練る。黄色がひときわ鮮やかに仕上がります。
上等の赤ワインをホットメニューにしました。「寒さの冬をオロオロ歩いて」います。